師走の大祓え─人形焼却の神事─
神道神祇本廰と「にっぽん文明研究所」/高円寺氷川神社
12月18日、東京都杉並区の高円寺氷川神社で、神道神祇本廳とNPO法人「にっぽん文明研究所」(奈良泰秀代表)の共催で令和4年度「師走の大祓え─人形焼却の神事─」が斎行された。この年に二度の大祓式の神事は國學院大學院友会館が建設された翌年から継続されている。
「大祓」は、国の災禍を除き、すべての人々が知らない間に犯した、また犯してしまう罪咎穢れを祓う6月と12月の伝統神事。古事記や日本書紀にも記述があり、平安時代には京都の朱雀門に皇族から庶民まで集めて、中臣氏が「大祓詞」を宣読した後に卜部氏が祓の儀式を行ってきた。大祓は大嘗祭など重要な祭儀の前や斎宮の卜定、悪疫や天災など異変の際にも臨時に執り行われてきたが、現在は1年の半期の穢れを祓い、次の半期の無事と幸せを願う節目の神事となっている。
今回は一般の参列を制限して執り行われ、「災禍と邪気を祓い社会の繁栄発展と皆さんの弥栄と健康を願う大祓え」と題し、世界平和、日本の繁栄、個人の安寧と幸せを祈願。令和5年の上半期を迎えることを主願とし、新型コロナウイルスの終息、ロシアのウクライナ侵攻の犠牲者の鎮魂と平和解決、日本の国家安定の祈願が併せて行われた。
神事は奈良泰秀代表が斎主を務め10名の祭員とともに入場し、神前拝礼、修祓、献灯、斎主による岩笛吹奏による鎮魂、降神ノ儀、献饌とつづき、大祓詞進言祝詞を奏上した。
「コロナウイルス為る 忌はしき流行病現れ出でて 諸国に拡ごり往くも終息の宣言(しらせ)未だ無く思ひ惑ふ伊都も由々しき事態(あらざま)の続く侭なれど、近津頃 如何ならむ外国の荒ぶる禍津神の為せる業為れや 俄かに東のヨーロッパに戦ひの火柱上がり 爆弾(やだま)飛び交ひ 無慈悲にも 無辜の民の身罷る人等が増へ往くは憤りて哀しみの極まる所なれ。戦場を朱(あけ)に染めつつ二つ無き生命を捧げ息の緒を断ち給へしは哀れ痛しき事にこそ有れ、今由後は 再び斯かる凄惨(いたまし)き惨事(わざわひ)を二度と起こさじと世界(あめのした)の国々と会議(ことはかり)を重ねて睦びを交はし 浦安の世と護り導き、戦争(たたかひ)無き世の平和実現を成幸(なしさきはひ)給ひ、将又(はたまた)未だ病者(やまひびと)等(ら)が増え往く流行病を神々等の厳しき御神慮(みはかり)を以て 気吹(ゐぶ)き払ひ退(そ)け給ひ、一時も速やけく終息せしめ給ひて今し此に集ひて祈願(ねぎ)奉る」と新型コロナウイルス終息、ロシアのウクライナ侵攻の犠牲者の鎮魂、平和解決、そして世界平和を祈願した。
その後、一人ひとりの氏名・住所を読み上げ令和5年上半期の無病息災を祈祷した。次に大祓詞を全員で奉唱、会場は大きな声に包まれ、また参列者一人ひとりが所願成就を祈った。次に斎主が玉串を奉って拝礼し、参列者がそれに続いた。撤饌、鎮魂(岩笛吹奏)、昇神ノ儀の後に人形(ひとがた)清祓の儀が行われた。
人形清祓の儀では、それぞれの自身の穢れや災厄を移した人形を、神職が祓う。この人形には氏名、生年月日、年齢が書かれてあり、人形を手に持ち自らの体をなでて息を3回吹きかけ、もろもろの罪穢れをうつしたもの。人形はあとで焼却され、灰は川に流される。人形を神職が大麻で祓った後、消灯の儀。最後に斎主祭員と参列者が神前を拝礼し、令和4年度「師走の大祓え」は滞りなく、修められた。