「マイ・ウェイ」

2024年5月10日付 811号

 4月29日の昭和の日、天地子は地元の合唱祭で仲間と3曲歌った。田崎はるか作詞、橋本祥路作曲の「こころの中にきらめいて」と松井孝夫作詞・作曲の「分岐点」、そしてポール・アンカ英語詞、中島潤日本語訳、ジャック・ルヴォー、クロード・フランソワ作曲の「マイ・ウェイ」。
 最初の2曲は若者向けで、「マイ・ウェイ」は中高年の男性の心境を歌い、フランク・シナトラの持ち歌になって大ヒットした。自分の死が近づく中で、人生を振り返り、心の思うままに生きてきたので、後悔はない、と高らかに歌う。
 日本語訳の1番はその通りだが、2番は一転して「君に告げよう、迷わずに行くことを、君の心の決めたままに」と、これは明らかに妻への「ごめんなさい」。
 今の天地子の心境にぴったりなので、とても感情移入できたのだが、不思議に思って英語詞を見ると、そんな意味は全くなく、男は反省も何もしていない。これが日米の文化差なのだろうか。
 日本語訳にあたり、中島潤さんはおそらく、このままではまずい、妻を怒らせてしまう、と思ったのだろう。そして日本人の高齢夫婦に合うように変えた。その気持ちはよく分かるので、2番を歌うたびに妻の顔がちらつくようになった。
 で、妻が聴いてくれることを期待したのだが、あいにく風邪を引いて、それどころではなかったようだ。自分で朝ご飯を用意し、スーパーで弁当を買って会場に向かった…。