日本酒

2023年10月10日付 804号

 仲間と6ヘクタールの田んぼで酒米を栽培している天地子は先日、地元の酒造会社の人たちと実った米の現地視察と意見交換会に参加した。コロナ禍で落ちていた需要が回復しており、酒米の注文も上方修正。田んぼを1割ほど減らした去年とは逆の展開となった。
 国内での需要が頭打ちなのに対して、日本酒は海外で人気。県下の酒造会社の取り組みを聞くと、量はわずかだが着実に伸びているとして、インドからも注文があり、宗教上の問題はないのかと驚いたとの話もあった。
 そこで出たのは、政府が日本酒や焼酎をユネスコの無形文化遺産の来年の登録に向けて準備しているという話。提案の理由は、こうじ菌を使う日本独特の酒文化であること。和食がユネスコの「食の無形文化遺産」に登録されたのは2013年で、実現すればそれに続く快挙となる。
 インバウンドでは近年、日本人の日常の暮らしを体験するツアーが外国人に人気だという。地域おこしによそ者の視点が大事だとされるのは、ささやかすぎて気づかないことに、気づかせてくれるから。50前に母の介護で実家に帰った天地子も、18歳までには気づかなかった、都会での暮らしにはない良さを再発見した。
 その一つは、自然が身近なこと。早朝の犬との散歩や農作業をしながら、自分の体と環境が溶け合っているのを感じる。
 もう一つは、人間関係が密なこと。生活共同体なのでそうなのだが、一方、深まりがないのも現実。かつて介在していた宗教が衰退したからだろう。魂の充足にはそれを求めたいのだが、さて…