避難所運営ゲーム

2023年9月10日付 803号

 地域の防災訓練の一つとして自治会長や小学校の先生たちが100人ほど参加し、避難所運営ゲーム(HUG)が行われた。静岡県が開発した図上演習で、震度7の地震発生で被災した人たちのため小学校に開設された避難所を7人で運営する。
 自治会長で防災士でもある天地子はチームのリーダー役として、「老人2人と夫婦、子供3人の家族が来た」「障害者のいる家族が来た」「駐車場を決めてほしい」「対策本部から支援物資が届くので置き場所を設置してください」など書かれたカードを次々を読み上げ、何の事前打ち合わせもなく6人がそれに対応する。
 オリエンテーションの講師から、リーダーはカードを読むだけで指示を出してはいけないと言われていたが、学校の平面図を見ながら思案している6人に、「まずは通路を決めたら」と言ってしまった。すると女性教師が、赤のマジックインキで「幅はどうしよう」と言いながら、体育館に線を引いた。
 遅れてきた自治会長の男性は、腕を組んだまま眺めるだけで、動こうとはしない。知り合いらしい2人の若い男性は、ああだこうだと話すだけでなかなか決められない。会社や役所だと上位下達でことが進むのだが、地域ではそうはいかない。対等な立場の人たちに共感を広げていくしかないのは、自治会運営で何度も経験してきた。
 でも、それが人間社会の基本ではないか。いわば「利他」の集積により成り立つ集団で、宗教が説いてきたこと。幸せな社会づくりに結び付いているように思えた。