田んぼダム

2023年3月10日付 797号

 3月になると麦の生育を見ながら、田植えの準備が始まる。両足の指先を野焼きでやけどした天地子も、8割方回復したので、小麦の田んぼのあぜ際に生えた雑草に、背負いの噴霧器で除草剤を散布した。液剤に機器で約20キロ、2か月ぶりの重労働だ。見かねたのか、息子が手伝ってくれたのは怪我の功名かもしれない。もっとも、アルバイト代はしっかり受け取った。
 今年、県の補助事業で取り組むのは田んぼダム。洪水対策を流域全体で行う事業の一つで、田んぼの排水口の上部に三角の落水口のある板をのせ、通常より多い水を田んぼに溜めようというもの。最近の流行で、農作業もSDGsに関連付けることが増えている。あぜからの水漏れを防ぐにはトラクターに付けた専用器具によるあぜ塗りが必要で、それにも補助金が出る。
 県から支給される板は32センチから55センチまでの5種類、さらにあぜ塗りの距離を計算しなければならない。ところが、排水口の幅はまちまちで、130の田んぼを歩いて調べることに。次に、田んぼごとにあぜ塗りする箇所を調べ、地図の縮尺から原寸を計算すると約7千メートルに。さていくら補助金が出ることか。
 トラクターが耕耘すると、シラサギがその後を追って歩く。はじけ出されてくるミミズや虫を食べるためで、彼らなりに農業と共生している。ネズミやカエルが出てくるとカラスがついばむ。そんなのどかな風景が、ウクライナ戦争による肥料の高騰などで消えないよう、知恵と力を尽くしたい。

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