終戦から77年、全国戦没者追悼式

天皇陛下、追悼と平和を祈るおことば

黙祷を捧げられる天皇皇后両陛下

 終戦後77年を迎えた今年8月15日、東京都千代田区の日本武道館で全国戦没者追悼式が開催された。当日は、天皇皇后両陛下が御臨席され、岸田文雄内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官、各国務大臣、各都道府県代表、関係団体の代表ら合わせて約千人が参列し、約310万人を数える全戦没者に追悼の誠を捧げた。
 午前11時51分、開会が宣言され、全員が起立して両陛下を迎える。国歌斉唱に続き、岸田文雄内閣総理大臣が式辞を述べた。
 「祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦場に斃れた方々。戦後、遠い異郷の地で亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、各都市での爆撃、沖縄における地上戦など、戦乱の渦に巻き込まれ犠牲となられた方々。今、すべての御霊の御前に心よりお祈り申し上げる。今日の平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い命と、苦難の歴史の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れない。戦後、我が国は、一貫して、平和国家としてその歩みを進め、歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきた。戦争の惨禍を二度と繰り返さない決然たる誓いをこれからも貫いていく。我が国は、国際社会と力を合わせながら、世界が直面する様々な課題の解決に、全力で取り組んでいく。今を生きる世代、明日を生きる世代のために国の未来を切り拓いていく。戦没者の御霊に平安を、ご遺族の皆様にはご多幸を、心よりお祈りする」
 両陛下は標柱の前に進み深く一礼された。正午の時報に合わせ一分間の黙祷を捧げられ、両陛下に合わせ、参列者が同様に黙祷を捧げた。
 天皇陛下が「おことば」を述べられた。
 「本日、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来77年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
 私たちは今、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による様々な困難に直面していますが、私たち皆が心を一つにし、力を合わせてこの難しい状況を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。
 ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」
 細田博之衆議院議長、尾辻秀久参議院議長、戸倉三郎最高裁判所長官の追悼の辞の後、昭和13年11月に中国で戦死した、大月克己陸軍伍長の子・大月健一氏が遺族代表として追悼の辞を述べた。
 「戦後の混乱の中で私たちは多くの困難に直面し、一家の大黒柱とならざるを得なかった母は、私たちを守り育ててくれた。今日の我が国は平和と自由を享受しているが、それは精魂込めて戦い、散華された戦没者の犠牲の上であることを忘れない。世界の恒久平和実現に向けて、戦争の悲惨さと平和の尊さを訴え続けることを諸霊に誓う」
 献花となり、岸田総理はじめ参列者が戦没者に黄色菊を捧げた。最後に加藤勝信厚生労働大臣が献花して、式典は滞りなく終了した。