河津桜

2019年3月10日付 749号

 駅のポスターに誘われ2月26日、伊豆急に乗って河津桜を見に行った。河津駅に着いたのは午後2時、駅は多くの人であふれ、駅前から桜並木が続いている。濃いピンクの桜の下に黄色い菜の花も満開で、若い女性たちが撮影に夢中。外国人が多く、スカーフの女性たちはインドネシアやマレーシアからだろう。

 河津桜は1955年、静岡県河津町のある男性が、河津川沿いの雑草の中で1メートルほどの原木を発見し、庭先に植えたのが始まり。その後、新種と判明し「カワヅザクラ」と命名され、1975年に河津町の木に指定された。

 河津川の堤防をはじめ町内全域に植えられたのは1968年からで、81年から毎年「河津桜まつり」が開催されている。河津駅近くの河口から河津川の上流に向かって「河津桜並木」が約3キロ続く。

 桜の幹には地区名とナンバーを記したプレートが付けられ、丁寧に世話されている。桜並木の一番上流に「沢田ねはん堂」があり、1796年頃に作られた釈迦の涅槃像が祀られていた。

 お堂横の丘に登ると、河津川の全景が見渡せる。感心したのは、登り坂の土止めやベンチに孟宗竹が使われていること。天地子も少しずつ竹林を切り開き、山に登る道を開いているのでまねしよう。

 民俗学者の宮本常一は、渡りの大工だった父に、何でもない風景から町の景気などを知るすべを教えられ、やがて「歩く民俗学者」となった。経験を重ねた高齢期の旅は昔より面白い。