お釈迦様の生誕祝う花祭り/さいたま市延命寺

シタール演奏でインド偲ぶ

延命寺の花祭り法要

 4月4日の午後、さいたま市浦和区の天台宗延命寺(河野亮仙住職)で、お釈迦様のご生誕をお祝いする花祭りが開催された。JR浦和駅から数分の住宅地にたたずむ延命寺は、天長6年(829)の創建とされ、入口には樹齢約400年の市指定天然記念物ムクノキがそびえる。
 延命寺の花祭りは、従来、音楽と踊りで華やかに祝ってきた。「インドの芸能は、もともと神様の前で上演し、神仏に喜んでもらうための法楽。神仏を勧請して花を散華して供養するもの」と住職は解説。本年も、シタールの演奏、法要、インド舞踊などが準備されていたが、新型コロナの感染拡大の影響を受け、感染防止策を徹底するなか、規模を縮小し、境内での屋外法要となった。
 幸い、この日は快晴に恵まれ、4月下旬の陽気となり最適の環境が整えられた。
 河野住職の挨拶の後、シタール奏者のヨシダダイキチ氏の演奏。神秘的なインド楽器の音色に、境内が浄められ心落ち着かせるものとなった。その空気の中で法要が厳修された。本堂入口に設置された花御堂の両脇に式衆が立ち、声明の後、導師の河野住職が表白。精魂こめて仏頂尊勝陀羅尼を唱えた。
 仏頂とは、仏の32相の一つで頭頂の骨肉塊のこと。これが神格化された仏頂尊は、頭頂から光を放ち一切の悪業を滅ぼし、寿命を延ばすという。陀羅尼では「普く光明が広がる自性清浄なる仏頂よ、悪業を除いて浄め給え、浄め給え、偉大な真言句によって私を灌頂し給え。諸苦悩を除き給え、…全く清らかなものよ、勝利あれ、わたしの身体を金剛不壊になし給え、わたしを蘇らせて下さい。悟らし給え、幸いあれかし。」と祈る。法要の最後は般若心経で結ばれた。
 その後、再びヨシダダイキチ氏が40分にわたりシタールの演奏。祈りと音楽であたかも浄土のような空気に包まれ、不安や恐れ、日常のストレスから解放される時間となった。
 境内で法要に参加したのは、近隣の住人数名。受付では手を消毒、式次第と梵字の記された紙製の「魔除けのマスク」が配布された。
 「今年の花祭りを皆さんにご案内するかどうか最後まで迷ったが、こういう時だからこそ祈ることが必要と思った。幸い境内で密集を避けて出来たのでほっとしている。近年は、本堂の中で法要を行ってきたが、最初は境内で音楽や踊りで祝ってきた。原点に戻ったようだ。」法要を終えた住職はこう語ってくれた。
(2020年5月10日付763号)