美術/歴史(とき)を語る近代絵画

-明治神宮所蔵絵画と内陣御屏風-
明治神宮ミュージアム

 10月14日より12月3日まで東京都渋谷区の明治神宮ミュージアム(明治神宮境内)で「歴史(とき)を語る近代絵画-明治神宮所蔵絵画と内陣御屏風-」が開催されている。この展覧会では、明治神宮所蔵の絵画より、歴史的題材を描く作品や、明治神宮にゆかりのある作品、皇室とつながりの深い作品が紹介されている。また、今回の展示会では、明治神宮に納められた二世五姓田芳柳(1864-1943)の作品及び収蔵後資料が初公開されている。
 御祭神である明治天皇と昭憲皇太后ゆかりの絵画には、御尊影を始め、御下命により制作された作品や身近に置かれた作品などがある。『御屏風』(昭憲皇太后御料、岸浪柳渓、松野霞城、池上秀畝、垣内雲嶙、明治時代)はそれぞれ作者が異なる南画(文人画)を四曲一隻の屏風に仕立てたもの。また、明治天皇の御姿は錦絵でも描かれ、市井でも出版されていた。『霊鷹奉献の図』(尾形月耕、明治27年)など当時の様子をうかがえる作品が紹介されている。
 『岩倉具視玉松真弘謀大議圖』(明治天皇御料、川辺御楯、明治時代)及び『岩倉具視玉松真弘論議圖』(明治天皇御料、川辺御楯、明治時代)は、明治天皇の御下命で制作されたもの。前者では蟄居中の岩倉具視を国学者の玉松真弘が訪ね、謀議する様子が描かれ、後者では、王政復古直後に岩倉が玉松を宮中に招いて助言を請う様子が描かれている。歴史的な出来事がやまと絵の伝統手法と緊張感のある近代的表現によって描かれている作品である。
 旧内陣御屏風『桜・桐・菊・蜜柑図屏風』(下山観山、大正9年)は、創建当初より本殿内陣に安置された御神宝であり、正倉院宝物にもみられる「銭形屏風」という一扇ずつ緑を廻らせた古い形式で制作された。
 二世五姓田芳柳は下総国猿島郡沓掛村の出身の洋画家。明治天皇の御尊影を描いたことで知られる養父・五姓田芳柳の名を継いだ。明治神宮外苑にある聖徳記念絵画館の80点の壁画の一つを担当し、全ての揮毫者の参考に供するための画題考証図を手掛けている。『枢密院憲法会議』(聖徳記念絵画館壁画下図、二世五姓田芳柳作、大正15年頃)、『鐘馗図』(二世五姓田芳柳作、大正4年)などの作品が展示されている。

会場:明治神宮ミュージアム(明治神宮境内)
会期:令和5年10月14日(土)から12月3日まで(休館日:毎週木曜日、但し11月2日〔木・祝〕は会館
開館時間:午前10時から午後4時半まで(最終入館は閉館時間の30分前まで)
お問い合わせ:03-3379-5875
ホームページ:https://www.meijijingu.or.jp/museum/

『岩倉具視玉松真弘謀大議圖』明治天皇御料、川辺御楯、明治時代(右)及び『岩倉具視玉松真弘論議圖』明治天皇御料、川辺御楯、明治時代(左)
旧内陣御屏風『桜・桐・菊・蜜柑図屏風』下山観山、大正9年①
旧内陣御屏風『桜・桐・菊・蜜柑図屏風』下山観山、大正9年②
『枢密院憲法会議』聖徳記念絵画館壁画下図、二世五姓田芳柳作、大正15年頃