総本山善通寺で舎利講/香川県善通寺市

釈迦の遺徳偲び、平安祈る

善通寺御影堂での舎利講の法会

 香川県善通寺市にある真言宗善通寺は総本山善通寺の御影堂で7月1日から16日にかけて、釈迦の遺徳を偲び、寺内外の平安と五穀豊穣を祈る法会「舎利講」が営まれた。例年は1か月にわたり行われるが、今年は弘法大師生誕1250年記念事業開催のため期間が変更された。
 14日の午前9時、導師と僧たちが入場し、法要が始まった。御影堂には近所の人たちやお遍路さんが集まっている。法会では、読経に続いて、釈迦をたたえる和讃を一同で唱え、最後に舎利拝戴があった。
 舎利は仏教の開祖、釈迦の遺骨のことで、仏法を象徴するものとして尊ばれている。
 また、釈迦が在世の頃、雨季に弟子たちを集めて説法や修行をした「夏安居」(げあんご)にちなみ、寺内の僧侶が日替りで説法し、日ごろの研鑽を披露する。
 この日、説法したのは4月に善通寺に勤め始めたばかりの28歳の柿本真宥さん。大阪の在家に生まれ、自衛隊を退職した父が仏教系大学に再就職したのを機に得度し、奈良県の信貴山朝護孫子寺の僧になったことから、父に連れられよく同寺に通うようになる。大学卒業後、消防庁に就職し、119番の電話応対の仕事に疲れ果てた時、信貴山で聞いた話に救われ、知人の紹介で京都の泉涌寺で修行を始めた。
 午前の修行を終え、午後の修行に向かう途中、数人の人に取り押さえられ、問い詰められたが、修行中、口をきいてはいけないので話せない。それに気づいた人がとりなしてくれた時、目の前に輝くような人が現れ「修行を頑張ってください」と話しかけられた。それが秋篠宮文仁親王殿下だった。紀子妃と共に歴代天皇が眠る同寺を訪れていて、真宥さんは警護員に取り押さえられたのである。
 それをご縁と思った真宥さんは仏教の世界に進むことを決意し、消防庁を退職した。去年暮、善通寺で伝法灌頂を受けた真宥さんは、勧められるまま同寺に就職したという。「ご縁は周りに散らばっていて、求めれば得られます」と話を結んだ。
 善通寺は、唐から帰国した空海が、父の寄進した土地に師の恵果が住んでいた長安・青龍寺を模して建立したと伝わる。弘仁4年(813)に落慶し、父の諱・善通(よしみち)から善通寺と号した。正式には屏風浦五岳山誕生院善通寺で、山号の「五岳山」は寺の西にそびえる香色山・筆山・我拝師山・中山・火上山の五岳に由来し、山々が屏風のように連なることから、当地はかつて屏風浦とも称されていた。