クラシック音楽

2022年6月10日付 78号

 天地子は今年1月8日と同じような症状が5月28日に生じ、診察を受けると、やはり腸閉塞だった。両日とも土曜で、同じく一週間後の土曜に退院した。初回はガスが出るまでに3日かかったが、今回は1日、これを改善とは喜べまいが…。
 天与の休暇と思い、先回は林望著『謹訳源氏物語』を通読。今回持参した一つは、買いながら読まないでいた澤和樹著『教養として学んでおきたいクラシック音楽』。取り上げた曲を聴かないで、文字だけを追うのは意味がないと思ったから。
 東京藝大学長の澤氏の演奏は、同大音楽部事務局にいた友人の勧めで、何度が聴いていた。ヴァイオリニストだったさだまさしと懇意で、NHKの「今夜も生でさだまさし」にも出演している。普通のサラリーマン家庭に生まれた澤氏がヴァイオリンに出会ったのは、幼少期に読んだ絵本『三びきのこぶた』に、ヴァイオリンを弾くこぶたが登場したのを見て、「これをやりたい!」と母にせがんだのがきっかけという。
 クラシックとはとんと縁のなかった天地子が、高齢期になって出会ったのはベートーベンの「第九」。市制10周年の記念演奏会に合唱の友達に誘われ、好奇心で参加した。それなりに限界に挑戦しながら感じたのは、器楽の演奏や他人の声に調和させる素晴らしさ。シラーの詩に感動したベートーベンが曲を付け、ベルリンの壁崩壊の際に高らかに歌われ、EUの歌にもなったほど、他者との調和への願いが祈り込められている。ウクライナ戦争の終結時に歌われるのも、この曲がふさわしい。