市川海老蔵が京都平安大使に

コロナ収束願い父子で記念公演/平安神宮

市川海老蔵氏と長男・堀越勸玄さんの「橋弁慶」

 11月5日、比叡山延暦寺の開祖伝教大師・最澄以来1200年、絶えることない不滅の法灯平安神宮へ分灯する分灯式が同寺で執り行われた。分灯式には「京都平安大使」に就任した市川海老蔵氏が歌舞伎俳優個人では初めて参列し、さらに翌6日には同氏らによる記念公演も開催された。
 分灯式では、平安神宮と比叡山延暦寺が合同で一刻も早い世界の安寧を祈願し、千日回峰行者・藤波源信大阿闍梨による特別護摩祈祷が行われた。その後、延暦寺から分灯され、市川海老蔵氏によって運ばれた「不滅の法灯」が、平安神宮初となる秋のライトアップ「きぼうのあかり」を点灯させた。比叡山延暦寺と平安神宮とが共に希望の光を世界に届けることになった。
 翌6日、特別記念公演として平安神宮で、コロナ収束を願う『京都平安大使就任記念 市川海老蔵 平安神宮特別記念公演』が開催され、市川海老蔵氏は「三番叟」(さんばそう)を、長女・市川ぼたんさんは舞踊の名作「藤娘」を演じた。また、海老蔵氏の長男・堀越勸玄さんは、弁慶と牛若丸の出会いを描いた「橋弁慶」を父・海老蔵氏と親子で披露した。さらに、人間国宝・藤舎名生氏と田中傳次郎氏による「一調一管」の演奏が行われた。なお本公演は、市川海老蔵氏の長女・市川ぼたんさんの京都初お目見えとなり、歌舞伎発祥の地・京都で親子3名が共演することとなった。
 公演に先立つ10月6日、市川海老蔵氏は京都市の平安神宮で「京都平安大使」の委任を受け、本多和夫宮司から同大使の委嘱状を手渡されていた。京都平安大使は、イベント出席や公演などを通じ京都から日本や世界に希望を届ける役割を担う。任命式に出席した京都市の門川大作市長は「経験したことのないコロナ禍で京都の町は痛んでいる。そんな京都から日本人を元気にしようと、市川海老蔵さんから高いお志で申し出をいただいた」と期待を示した。
 海老蔵氏は、「朝、散歩するとよく感じるように、京都を中心にして日本の寺社があり、日本人のDNAに触れる部分が京都にはある」「コロナの感染者数も減り、少しでも多くの方々に京都に足を運んでいただきたい」と語った。
 「三番叟」は天下泰平、五穀豊穣を願う演目であり、「橋弁慶」は京都・五条橋での武蔵坊弁慶と牛若丸(源義経)の出会いを舞踊にした演目である。秋の夜に、安寧への祈りを込められた演目がライトアップされた朱塗りの平安神宮を舞台にあでやかに演じられた。
(竹谷文男)