神道国際学会国際神道セミナー

「神々とスポーツ」

「鳥船」を指導する宮﨑貞行氏

 神道国際学会(マイケル・パイ会長)は3月13日、都内で公開講座「第23回国際神道セミナー」を開催した。テーマはオリンピック年にちなみ(その後延期決定)「神々とスポーツ」。第一部は元帝京大学教授の宮﨑貞行氏が「川面凡児(かわつら・ぼんじ)の身体作法」、同会理事で関西大学教授のアレキサンダー・ベネット氏が「スポーツと宗教における信仰のクロスオーバー」と題してそれぞれ基調講演を行った。
 第二部のパネルディスカッションでは、同会理事長の三宅善信氏(金光教泉尾教会総長)がモデレータに、パネリストには基調講演の2氏に同会常任理事の芳村正徳氏(神習教教主)が加わり議論を展開した。
 近著に『宇宙の大道を歩む─川面凡児とその時代』がある宮﨑氏は、明治、大正期の古神道家である川面凡児の神観と人間の構造理解からくる身体作法を通した神人合一に至る道について、実技を交え解説した。
 川面凡児は文久2年(1862)現在の大分県宇佐市に生まれ、昭和4年に没した。少年時代に山に籠り、蓮池貞澄から仙道を学んでいる。学者でかつ霊能者であった川面は、大本教の出口王仁三郎の「万教帰一」、大倭教の矢追日聖の「還元帰一」「顕幽一体」、合気道の植芝盛平の鳥船、神社神道に導入された禊の作法など後世に多くの影響を与えた。宮﨑氏は「川面は明治の近代論理で古神道(神ながらの道)を表現し、神人不二の『イメの境地』に到達する8段階の修行法を開拓した」とその功績を評した。
 川面のとらえた日本のカミは「全一神」(Holistic God)と言え、「一神にして多神、多神にして汎神。創造神に比して、ダイナミックな働きの生成神と見た。一方、人間は身体(肉体)、心体(意識)、霊体(最高意識)の三層の構造体で、最高意識が受肉した存在であるなら、すべての人間は現人神と言える」と主張した。そして、意識からではなく、体から神をつかまなければならないとして、動的瞑想法を行った。
 宮﨑氏は川面流の身体作法を、①鳥船(船漕ぎ運動)、②ミイズ呼吸(宇宙に充満しているミイヅと呼ばれる神気を口からのみこみ、それを下丹田に運ぶ)③魂殖り(丹田で握った手を振動させながら、神気を増殖させる)④神名を連唱し、神のイメージに合一していくの4点で解説し、参加者は同氏の指導でこの作法を行った。
 ベネット氏はニュージーランド出身の武道学者で、剣道教士7段の武道家。昨年のラグビーワールドカップでは、ウェールズ代表チームのリエゾン・オフィサーとして、日本滞在の間、選手をサポートした。
 宗教とスポーツの関わりについて同氏は、「スポーツには宗教の目的に役立つ機能があり、宗教の教義の伝達や改宗の手段として利用されてきた一方、世俗的、肉体的要素が重視され、社会的、道徳的秩序に対する脅威として拒否されることもある。つまり、宗教に受け入れられながら拒絶されてきた複雑な関係だ」と述べた。
(2020年4月10日付762号)