東日本大震災追悼・復興祈願祭/鶴岡八幡宮

被災地へ祈り絶やさず

鶴岡八幡宮
東日本大震災追悼・復興祈願祭「神道の祈り」で祝詞を奏上する吉田茂穂・鶴岡八幡宮宮司

 鎌倉宗教者会議主催(吉田茂穗会長)の東日本大震災追悼・復興祈願祭が3月11日、鶴岡八幡宮(吉田茂穗宮司)で執り行われた。今年は新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、政府の要請に応え規模を縮小して行われた。
 追悼・復興祈願祭は東日本大震災の1か月後に鶴岡八幡宮で第1回が行われ、今回が10回目。鎌倉の神職、僧侶、司祭、牧師が共に震災の犠牲者を哀悼し、被災者に思いを寄せて祈りを捧げる。今年は神道23名、キリスト教21名、仏教30名が参加した。
 午後2時40分、奉仕する宗教者一同が雅楽、散花と共に列を作り舞殿まで参進した。舞殿に昇殿した後、地震発生時刻の午後2時46分に鐘の音に合わせ黙祷。辺りは静寂に包まれた。
 最初に鶴岡八幡宮をはじめ鎌倉の神社の神職23名による「神道の祈り」が捧げられた。修祓の儀に続き、神職と参列者全員が大祓詞を唱えた後、宮司一拝、献饌。斎主の吉田宮司が祝詞を奏上し、「東日本大震災で損害を受けた郷々の復興を、鎌倉仏教界ならびに鎌倉キリスト諸教会の主な人々、集った人々と心を合わせ祈願する。今も不自由な暮らしをしている人々が身も心も導かれ、復興の業に携わる人々が心を合わせ、苦難を乗り越え、元の状態に戻り、日本が静まり守られるように、心から祈りを捧げる」と、大震災に見舞われた郷土に住む人々に心を寄せ、安らぎを願い、復興を大神様に祈念した。
 次に「仏教の祈り」が導師の臨済宗円覚寺派管長・横田南嶺老師と鎌倉市仏教会30名の僧侶により執り行われた。導師が法要に込められた思いを読み上げる「香語(こうご)」を奉読し、僧侶と参列者全員が観音経世尊偈を読経した。導師と共に参列者全員が「願わくばこの功徳を以て、普(あまね)く一切に及ぼし、我ら衆生と皆共に仏道を成ぜんことを」と「ご回向」を唱和して真摯な祈りを被災地に送った。
 次に鎌倉市内キリスト教諸教会(カトリック教会、日本基督教団、日本聖公会、日本キリスト教会)の司祭、牧師による「キリスト教の祈り」が捧げられた。カトリック雪の下教会・古川勉主任司祭が始めの祈りを捧げ、崔源太(チェ・ウォンテ)同助任司祭が聖書を朗読し、全員で讃美歌「いつくしみふかき」を斉唱。カトリック大船教会マルコ・ターディフ主任司祭が再び聖書を朗読した後、日本基督教団大船教会の松下道成牧師が祈りを捧げた。
 「大震災による悲嘆はあまりにも深く、求められるのは多く流される涙だけだ。十字架上でイエスキリストが『わが神、わが神、なぜわたしをお見捨てになったのですか』と叫んだ声が共鳴する。しかしそのことを通して新しい契約『わたしの律法を彼らの胸の中に授け、彼らの心にそれを記す。わたしは彼らの神となり、彼らはわたしの民となる』が与えられた。寄り添ってくれる人の思いに支えられて今の自分があり、新しい夢や目標に向けて生かされている」
 次いで、日本聖公会鎌倉聖ミカエル教会の北澤洋司祭が結びの祈りを捧げた。
 巫女により「浦安の舞」が奉納され、鎌倉宗教者会議の役員が玉串を奉って拝礼。宮司一礼の後、一同が退下し、合同祈願祭は滞りなく修められた。その後、舞殿の手前に焼香台が設置され、一般参列者が祈りを捧げた。
 鎌倉宗教者会議の朝比奈惠温事務総長(臨済宗円覚寺派浄智寺住職)は「震災の年の4月に鶴岡八幡宮で祈りを始めてすでに9年が経った。その時を思い出すと胸が詰まる。まだ道半ばだが、これから10年間また頑張りたい。諸宗教が祈りを共にすることで、宗教は異なっても実は違わないことを実感してきた。被災者の皆さまへの祈りを絶やさないようにしたい」と語った。
(2020年4月10日付762号)