酒米

2019年10月10日付 756号

 天地子の田んぼで刈り取りの最後を飾るのが酒米。うるち米の一種で、粒が大きく、中心部が白く濁っている。この白い部分が「心白」で、アミロースがしっかり詰まっておらず、すき間があることから光が乱反射し、白くなる。生食米では嫌われるが、酒米ではこの心白が重要だ。
 日本酒は、麹菌が米のデンプンを分解して、糖を作り、糖が発酵することでアルコールが醸成される。デンプンは麹菌のエサなので、すき間のあるほうが水分を吸収しやすく、麹菌は菌糸を伸ばしやすい。そのため、中心部が白濁しているうるち米を選び、山田錦などの酒米を作ってきたのである。
 ワインはブドウの果実の糖がアルコールになるのだが、ビールのもとになる大麦には大量の糖はない。しかし、種子は芽を出すときに栄養分であるデンプンを分解して、エネルギー源となる糖を作りだす。そこでビール造りでは、最初に大麦を発芽させ、デンプンを糖に変える。その状態が麦芽(モルト)で、糖を蓄えた麦芽を発酵させアルコールにしたのがビールである。
 米焼酎は日本酒を蒸留して造られる。日本酒を加熱すると、沸点が低いアルコールが先に気化するので、それを集め液化すると、元の日本酒よりアルコール度数の高い焼酎が得られる。ビールを蒸留したものがウイスキーで、スコットランドなど寒冷地で凍りにくくするために造られた。ラグビーWカップ予選リーグで、最後の強敵スコットランド戦を前にしてこの文を書いた。