毒矢には花びらで返そう
東京都仏教連合会の成道会
東京都仏教連合会の成道会の集いが十二月十一日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで開催された。第一部は法要で、菅野日彰・東京都仏教連合会会長(日蓮宗大本山池上本門寺八十三世貫首)が大導師を務めた。第二部は浅草寺法善院住職の塩入亮乗師が「『法談』ではなく、『宝談』をもとめて」という題で講演し、第三部は落語家の林家たい平師匠による清興「笑顔のもとに笑顔が集まる」で楽しいひとときとなった。
午後一時、会場が合掌するなか大導師が入場し、法要が始まった。献燈、献花、献香が全日本仏教婦人連盟によってなされ、三帰依文を参加者全員で唱和し、読経が行われた。最後に、大導師菅野日彰貫首が聴衆に親しく法話した。
「本日は釈迦が悟った日。釈迦は生老病死の苦しみから逃れるため六年間修行したが、苦しみだけが残った。その後、悟りの境地になり、皆が同じ境地に至ることができると教えた。修行の間に入ってきた邪魔は、食べ物や魔王、きれいな女性など。そして釈迦を殺そうとして放たれた毒矢が体に刺さると、花びらに変わり、散った。同じように、我々も人から嫌なことを言われたら、それは毒矢だと思い、嫌な言葉で返さず、花びらで返すようにしたい。夫婦の会話も花びらで返せば、関係が変わっていく」
第二部の講話で、浅草寺法善院住職の塩入亮乗師は次のように語った。
「東日本大震災の後、慰霊のために石巻を訪れ、供養をした。犠牲者には、遺体が見つかった人と見つからない人がいた。亡くなった方を思い出すからと、遺物を家に残している人がいたが、いつまでも残しているより供養をした方がいいと話した。ご遺骨がみつからない場合、被災地にあった枝を遺骨に見立てて供養しようとしたが、放射能があるからという理由で反対された。放射能はもうないと言っても駄目だった。
昔からお寺の屋根の四隅の風鐸があり、その中では病気にならないと言われていた。家のなかには、風鐸の代わりに風鈴を吊った。赤には魔除け疫病除けの力があるので、どこかに赤が入っている風鈴は疾病除け、魔除けになる。風鈴の音がうるさいと言う人がいるが、それは風鈴の意味を知らないからだ。
私は『女性の社会進出』という言葉は好きだが嫌いだ。昔の『鍵っ子』という言葉は、夕方帰宅してもお母さんがいない家庭のこと。そんな家庭で育つと誰にも愛を話せない子供になりかねない。子供が小学生までは母親は家にいてほしい。母親の力は子育てに必要で、子供の人生に大きな価値を持つ。子育ても社会貢献だ」
第三部では、林家たい平師匠が、落語家になるまでの経緯とそこで出会った人々や師匠、家族とのふれあいを独特の口調で面白おかしく語りながら、涙と笑いを誘い、観衆を魅了していた。
最後に、曹洞宗福厳寺住職の新見昌道・東京都仏教連合会理事長が挨拶し閉会した。
(2020年1月5・20日付729号)