英霊に感謝の誠、世界平和を祈願

靖国神社で春季例大祭、正式参拝も

参向する勅使筑波和俊掌典

 東京都千代田区の靖国神社(山口建史宮司)で春季例大祭が4月21日から22日まで斎行され、感染症まん延防止等重点措置終了により、正式参拝も行われた。
 春季例大祭に合わせ、岸田文雄首相は21日、「内閣総理大臣 岸田文雄」名で「真榊」と呼ばれる供物を奉納。後藤茂之厚生労働相も真榊を奉納し、安倍晋三元首相と自民党の高市早苗政調会長は21日に参拝した。超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(尾辻秀久会長)の103人の国会議員が22日朝参拝。皇室からは瑤子女王殿下が参拝された。
 快晴の4月22日午前10時、宮司・神職が参進、本殿所定の座に着いた。本殿内陣の御扉が開かれて神饌が供せられ、初獻の神酒を奠した。宮司が神前で祝詞を奏上し、英霊に感謝の誠を捧げた。二獻の神酒を奠した後、勅使の筑波和俊掌典が御幣物を奉って参向、本殿所定の座に着き、宮司が御幣物を神前に奉奠。勅使は御祭文を奏上し、玉串を奉って拝礼した。
 勅使・随員下向後、「鎮魂頌」が奉奏され、三獻の神酒を奠した後、宮司が玉串を奉って拝礼した。続いて特別参列者や崇敬者総代が拝礼。午後3時、御幣物、神饌が徹せられ、宮司が御扉を閉じ春季例大祭当日祭は滞りなく修められた。
 山口建史宮司は書中で参列者に御礼の挨拶。
 「2月24日、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が開始され、民間施設の破壊や住民の犠牲、国内外の避難民が千万人を超えるなど、言語に絶する悲哀と惨害の状況が連日報道されている。かけがえのない命を失った人々に衷心より哀悼の誠を捧げると共に、一日も早く事態が収束して平穏が取り戻されることをお祈り致す。
 明治天皇御製:よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ、昭和天皇御製:あめつちの神にぞいのる朝なぎの海のごとくに波たたぬ世を。御祭神は御歴代天皇の大御心を仰ぎ、世の平安を願いつつ迫りくる困難に心を砕かれ、身を挺してわが国をお守りくださった。恒久平和を希求する心を堅持しつつ、ひとりひとりが国を守るということを真剣に考えていくことが、これからは一層求められていくものと存じる」
 春季例大祭の期間中、境内では各流派家元による献華展やさくらそう展、能楽堂では各種奉納芸能が行われ、古武道、居合道、剣舞術、琵琶楽、日本舞踊、浪曲、講談、江戸芸かっぽれ、大正琴、琉球舞踊などの日本古来の芸能が能楽堂で奉納された。
 今年はミッドウェー作戦から80年目で、遊就館で特別展「海鳴りのかなた―波間より現れる戦中の記憶―」(前期展示)が3月19日から12月4日まで開催。「平和な時」「戦争時」「最期の瞬間」の三つに分けて海に殉じた英霊を特集し、水中写真家の戸村裕行氏の協力で、世界各地に沈んでいる軍艦の写真と引き上げられた品を展示している。

「みたまたちの最期の瞬間」 8柱の英霊のブース


 「戦前の日常と『海』への祈り」では、紀元2600年を祝う様子と神楽舞「浦安の舞」が紹介され、山本五十六とロンドンの海軍軍縮会議に参加し、ミッドウェー海戦で空母飛龍と運命を共にした山口多聞海軍中将のシルクハットやトランク、真珠湾攻撃で戦死した五島一平海軍飛行特務中尉のトルストイ全集や蓄音機などが展示され、潜水艦でのドイツと日本の交流の記録「伊号第29潜水艦訪欧写真アルバム」も見所。
 「みたまたちの最期の瞬間」では、英霊8柱のブースに日記や手記が展示され、来場者は声優の朗読を聞き、短い命を精一杯生きた若者たちを感じていた。