東大寺で「大仏のお身拭い」

すがすがしい姿でお盆に/奈良市

ゴンドラに乗って大仏のほこりを払う奉仕者たち

 奈良市の世界遺産東大寺の大仏殿で8月7日、本尊の盧舎那仏坐像(国宝)のほこりを拭う「お身拭い」の法要が執り行われた。毎年お盆を迎える前に行われる奈良の恒例行事で、堂内は窓や扉が開け放たれ、「奈良の大仏さま」として親しまれている大仏の頭の先から膝下まで溜まった1年分のちりやほこりが払われた。
 この日早朝、白装束にわら草履をはいた僧侶、信徒、関係者ら約170人は、二月堂湯屋で沐浴して身を清め、大仏殿に参集し、まず大仏の魂を抜く撥遣(はっけん)法要が執り行われた。橋村公英東大寺別当をはじめ参集者全員による般若心経の読経の後、お身拭いの奉仕が始まった。高さ15メートルある大仏の頭頂部へは体内から登って上がり、膝や手のひらへは下から登り、また顔や胸など垂直で高さのある部位は天井からワイヤーでつるした3基のゴンドラに人が乗り込んで、箒(ほうき)やはたきをかけてほこりを払い落とした。
 頭頂部に登った奉仕者は、大仏の頭に付けられた巻き貝のような「螺髪(らほつ)」と呼ばれる髪の毛の間を、ハタキや布できれいにしていった。十数メートルの高さにある螺髪に手と足をかけてその間を掃除する姿は、見ていてハラハラする。ハタキをかけるたびにちりやほこりがもうもうと舞ったが、「線香の灰や花粉が混じったほこりを被ることも、ご利益の一つ」とされている。このお身拭いの作業の間に、一年間に奉納された写経や写仏が大仏の胎内に収められた。
 参拝者は、大仏に白装束の奉仕者が取り付いて掃除する珍しい姿を写真に収めていた。「大仏さまの上に人が乗ることによって、大仏さまがどれほど大きいかがよく分かった」という声も聞かれた。また両親と共に参拝した小学生は、「高いところでゴンドラに吊り下げられながら掃除をしていて怖くないのかな」と見上げながら、「大仏さまもほこりが落ちて気持ちよさそう」と話した。
 東大寺の橋村別当は「大仏さまがきれいになるのをご覧頂いて、見る人たちも同じようにすがすがしくなったり、気持ちが落ち着いたり整ったりするのを感じて頂ければ嬉しい」と話した。また、中門や回廊を含めた大仏殿全体も掃除された。
 作業は9時半頃に終了し、黒光りする姿の大仏が現れ、その後大仏殿の消防設備の放水銃などが試験された。なお、お身拭いの法要はかつては住職一代につき一度だけだったが、1964年からは毎年8月7日に執り行われている。