比叡山宗教サミット34周年

世代継ぎ世界平和の祈り/比叡山延暦寺

「平和の祈り」を捧げる森川宏映天台座主(右)と東伏見具子全日本仏教会副会長

 阿部昌宏天台宗宗務総長の開式の辞に続き、初回のサミットで採択された比叡山メッセージが朗読され、森川宏映天台座主が登壇、次のように「お言葉」を述べた。
 「宗教の尊き導きを心の支えとする私たちは、異なる宗教間の相互理解を深め、共に手をたずさえ世界の平和を願い、先人の聖者や大徳の営みを受け継ぎ祈りを捧げて参りました。しかしながら世界では、国家や民族間の争いやテロリズム、民族弾圧や大量虐殺、大量破壊兵器の開発、国際法を無視した侵略行為や現状変更、人権保護の名を借りた分断と差別の扇動など、自らの主義主張を一方的に正当化し、利益を誘導しようとする一部の権力者らの行為によって、憎悪と暴力の連鎖は止まず、格差は益々拡大し、絆が断ち切られています。更には昨年から続く新型コロナウイルス感染症の世界的な脅威の中、私たちの心は大きな不安と心配に覆われています。今こそ、私ども宗教者は対話による相互理解を深め、博愛、利他主義に基づく連帯をより強固にし、共に祈り世界平和を希求し続けなくてはなりません。神仏のお導きにより人々の心に安らぎが訪れるよう、我ら宗教者は一層努力することを謹んで誓願いたします」
 次いで、全日本仏教会副会長・全日本仏教婦人連盟会長の東伏見具子師が登壇し森川座主と共に、オンライン登壇の新日本宗教団体連合会の岡田光央理事長(崇教真光三代教え主)、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の植松誠理事長(日本聖公会教主)、世界連邦日本宗教委員会の黒住宗道副会長(黒住教教主)、日本ムスリム協会の遠藤利夫会長、ローマ教皇庁のレオ・ボッカルディ駐日特命全権大使と、サミットを記念して比叡山高校の生徒が鳴らす「平和の鐘」に合わせ参加者全員で平和を祈った。
 続いて、ローマ教皇庁諸宗教対話評議会のミゲル・アンヘル・アユソ・ギグソット議長と世界仏教徒連盟のパン・ワナメティー会長の平和のメッセージが、それぞれ代読された。
 次に、延暦寺学園比叡山高校3年の北脇賀凡さんと金光学園高校(岡山県浅口市)3年の兒山恵和さん(オンライン)が子供を代表して「平和への思い」の作文を朗読。北脇さんは、新型コロナウイルスの感染者や医療従事者への偏見を疑問視し、最澄の「一隅を照らす」の精神が大事だとし、兒山さんは、戦前、祖父が出征したミャンマーに幼稚園を建てる活動に参加し、クラウドファンディングで文具などを贈った経験から、世界を身近に感じられるようになったなどと語った。それを受けて、宗教者を代表し神社本庁の田中恆清総長がオンラインで「高校生の平和への真摯な思いに感銘した。2人の指摘は平和への重要な視点で、周りの人たちをはじめそれぞれの信仰の教えの賜と思う」などと感想を述べた。
 最後に、水尾寂芳延暦寺執行による閉式の辞で閉幕。来年は宗教サミット35周年が開催される予定である。