川崎大師で大般若経転読会

疫病退散、災害絶滅を祈願

大般若経転読会

 7月21日、神奈川県川崎市の真言宗智山派大本山金剛山金乗院平間寺(川崎大師、藤田隆乗貫首)で大般若経転読会が厳修された。今回は災害絶滅、復興成就に加えて、新型コロナウイルス感染拡大のため、疫病退散、無病息災も祈願されるようになった。
 はじめに、集まった参詣者に僧侶の大山隆朋師が法要の準備法話をした。「当山では大般若経転読会の修行を年に12回行い、護摩供修行を通して、皆さんの心願成就を祈願する。ただお願いするだけでなく、『私も精進するので、仏様にあと一歩の手助けをお願いします』という心でいてほしい。護摩札を手にするのは御本尊である弘法大師を手にすることであり、護摩札をお祀りするのは、弘法大師を祀ることだ。法要の冒頭に皆様と一緒に『南無大師遍照金剛』と唱えるの同じように、皆様も日頃護摩札に『南無大師遍照金剛』と唱えてほしい。そうすることで弘法大師との仏縁を日々感じることが出来る」
 午後1時、太鼓の音が鳴り導師、式衆が入場。大般若経転読会が始まった。中島隆栄執事により加持および授けが行われ、次に心願成就のため、合掌して本尊の宝号「南無大師遍照金剛」を共に唱えた。その後、表白を読み上げ、導師藤田隆乗貫首が経を唱えた。掛け声がかかり、大きな太鼓の音、僧侶たちの威勢のいい声と共に転読が始まった。
 導師は転読の間、護摩を焚き、護摩供養を執り行う。転読が終わり、天下太平、五穀成就、疫病退散、無病息災、災害絶滅、復興成就、作業員安全、家内安全、交通安全、家内円満、心願成就のために祈祷が捧げられた。太鼓の音が大きく鳴り響く中、導師と式衆が般若心経を共に唱えた。最後に式衆が「南無大師遍照金剛」「般若守護十六善神」などと唱えながら祈祷を捧げ、大般若経転読会は滞りなく厳修された。
 大般若経の正式名称は「大般若波羅蜜多経」。600巻に及ぶ唐の玄奘三蔵訳の経典、小品般若、大品般若、金剛般若、文殊般若、秘密般若、理趣般若など般若経典の集大成で、インドから630年頃に持ち帰り、4年の歳月をかけて漢訳したもの。
 大般若経転読会では大般若経600巻を12人の僧侶が各50巻、1巻ずつ扇を広げるように空中にかざし、声高らかに経題を転読し、家内安全、交通安全、心願成就などを祈願する。主に天台宗、真言宗、禅宗(曹洞宗、臨済宗など)で行われる。
 護摩供養は真言密教独自の秘法。護摩木を焚くことで煩悩を焼き、心願を仏に伝える。護摩札は不動明王の分身で、不動明王を表す梵字が記されている。また護摩札には願主の名前と願いが記され、不動明王により清められ、願いが成就される。護摩供養では一体ずつ護摩札を護摩の火焔を通すことで不動明王の法力を宿し、それを家に持ち帰ることで、不動明王の守護を受ける。