ネズミ
2019年12月10日付 758号
来年はネズミ年。稲作の民にとってネズミは蔵の米をかじる害獣とされがちだが、稲田に巣を作る小さなカヤネズミのように、雑草や害虫を食べる益獣もいる。最適の住処はカヤの茂る河川敷や湿原だが、その減少で数を減らしている。
稲穂が奉納される神社にも、わずかながら狛ネズミがいる。京都市東山の大豊神社はその一つ。889年に宇多天皇の病気平癒の祈願のために創建された古い社だが、狛ネズミが据えられたのは昭和44年のこと。大国主命が野火に囲まれ困っているとき、ネズミが洞穴に導いて命を救ったという『古事記』の記述に依ったもの。正月には、新年のパワースポットとして多くの初もうでがあることだろう。
小さなネズミが十二支の干支頭になったのは、神様の招集に、ちゃっかり牛の頭に乗り、着いたとたんに飛び降りたから、と聞いたことがある。そうだとすれば、こざかしいと叱られそう。
水木しげるの『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくるねずみ男は、人間と妖怪との間に生まれた半妖怪で、善悪の間を行ったり来たりするのも人間らしい。鬼太郎の悪友なので、モデルがいたのだろう。
早々とネズミを論じたのは、天地子は来年、年男だから。こざかしさを気働きに転じ、周りの人や自然、社会に敏感になり、それを紙面に反映したい。フライング気味に新年の抱負を話したのも、生まれながらの短気のせい。この1年お世話になりました。よい年をお迎えください。