明治天皇百十年祭記念・明治天皇御生誕百七十年祭記念展

「みかどの御召物─明治天皇の黄櫨染御袍─」

明治天皇御料 黄櫨染御袍(夏)

 明治天皇の崩御百十年を偲ぶ年であると共に、御生誕百七十年という佳節の年である今年、明治神宮ミュージアムでは「みかどの御召物─明治天皇の黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)─」(前期)と、「みかどの御英姿」展(後期)を記念展として企画した。
 今上天皇がお召しになる黄櫨染御袍は、平安時代の嵯峨天皇の御代より、天皇の着用する服として定められ、節会と呼ばれる小規模のお祭り、外国の使節の応対、政治の調整の場、新月の時などに使用されてきた。明治天皇の御代になると、それまで唐風の装束が用いられていた、即位式を始めとする宮廷祭祀の大部分で用いられるようになった。そして伊勢の神宮への参拝など、祈りの場での装束としても定着していった。
 「みかどの御召物─明治天皇の黄櫨染御袍─」では明治神宮所蔵の明治天皇御着用・黄櫨染御袍3点を一度に展示している。「明治天皇御料 黄櫨染御袍(冬)」(明治中期、宝物館開館時御下賜品)は宝物殿が始まった時に大正天皇から下賜されたもの。もう一つの「明治天皇御料 黄櫨染御袍(冬)」(明治中期、明治維新百年を記念しての御下賜品)は昭和43年(1968)に昭和天皇より明治維新100年を記念して下賜された。装束の外側の端袖(はたそで)の部分が交換されている。明治天皇は物を大切にされ、重要祭祀で使う黄櫨染御袍であっても、袖が擦り切れたら、袖だけ交換して使い続けられた。「明治天皇御料 黄櫨染御袍(夏)」も宝物館が開館したときに大正天皇から下賜されたものである。また、企画展示室に入って、右手に展示されている服は、「明治天皇御料 御斎服」である。裾の部分がひだ状になっている「入襴」と呼ばれるもので、装束の中でも特に古い形式を保っている。
 宝物展示室では、明治天皇の御大葬時の行列模型が入り口に展示され、また御大葬時の新聞記事も展示されている。これらの資料によって、当時の様子を感じ取ることができる。「明治天皇御料 陸軍御正服」は明治19年(1886)に各国の服制に倣い、改正されたもので、肩章のみ特別なものとし、基本は陸軍大将のものと同様の形式になっていて、同11年に行われた天長節観兵式にお召しになられた。エドアルド・キヨッソーネ作の御尊影では明治天皇は同形の御正服をお召しになられている。「明治天皇御料 陸軍御軍服」は明治38年(1905)に作られ、翌明治39年4月に青山練兵場(現在の明治神宮外苑)で行われた「明治37、38年戦役凱旋観兵式」に初めて着用された。
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 会期:令和4年7月9日~9月4日(休館日:木曜日、但し8月11日は開館)
 開館時間:午前10時~午後4時30分(入館は閉館の30分前まで)
 お問い合わせ:03─3379─5875