未来照らす「竹あかり」

宮城県石巻市旧大川小で追悼行事

温かな竹あかりの光で照らされた会場

 東日本大震災の発生から11年目の3月11日、宮城県石巻市の旧大川小学校で竹燈籠にあかりをともす追悼行事「大川竹あかり」が催された。企画したのは、児童遺族らでつくる「大川竹あかり実行委員会」。
 大震災では児童74人、教職員10人が津波で犠牲になり、助かったのは児童4人、教職員1人のみ。学校管理下では戦後最悪の惨事だった。今回は大川小が、昨年7月に市の震災遺構として整備されて初めて迎える節目でもある。未来を照らす光に震災の記憶と教訓を語り継ぐ決意を込めたという。
 竹でできた高さ5メートルのシンボルオブジェの周りに犠牲者数と同じ84本の竹を並べ、発光ダイオード(LED)で光る竹燈籠を旧校舎の西側に設置。デザインは熊本県を拠点に全国で竹あかりの演出を行っている池田親生さんが手掛けた。竹は小学校に近い山林から遺族らが切り出したもの。燈籠製作には全国から延べ約500人が携わった。
 作品は「つないでいく」がテーマ。亡き人に思いをはせる日のあかりとして、〝過去と未来や、天と地をつなぎたい〟との願いだ。全国から届いたメッセージが書かれたランプも添えられていた。
 卒業生代表として挨拶に立った只野哲也さん(震災当時大川小5年生)は、「子供の命を真ん中に」を合い言葉に震災後、伝承活動に取り組む団体を立ち上げており、「子供の命を真ん中に考えることができなければ、人は必ず誤った方向へ進んでしまう。今や、日本だけでなく世界中の人が、このことに気づかなければならない時ではないか」などと語った。
 午後6時前に点灯されると、訪れた人々は竹に彫られたさまざまな模様から漏れる光を見て回った。跪き祈る人の姿もあった。
 「毎年、慰霊にきています。いつも3月11日は寒い。特に夕方は長くはいられないほど冷たい風が吹いているのに、今日は信じられないほどの暖かさで風もない。まさに天国の子供たちが、喜んでいるかのような気持ちになります」と地元の女性。
 実行委のメンバーは「未だにいろいろ揺れる気持ちが続くが、この企画は11年経ったからこそできるもの。新しい慰霊の形として長く続けていきたい」と語った。