靖國神社で秋季例大祭

英霊に感謝の誠捧ぐ

参向する勅使

 東京都千代田区の靖國神社(山口建史宮司)で令和2年秋季例大祭が10月17日の清祓から始まり、18日には秋季例大祭当日祭が斎行された。新型コロナウイルス感染対策で規模を縮小しながら、参列者は真摯な祈りを英霊に捧げた。
 菅義偉首相は「内閣総理大臣 菅義偉」の名で「真榊」と呼ばれる供物を奉納。田村憲久厚生労働相、井上信治万博担当相、大島理森衆院議長もそれぞれ真榊を奉納し、19日には安倍晋三前首相が参拝した。「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」は、春と秋の例大祭と、8月15日の「終戦の日」に参拝しているが、今回は新型コロナウイルス感染拡大防止のため参拝を見合わせた。
 秋の日差しにそよ風の吹く10月18日、境内には各地から参拝客が訪れていた。午後10時、大太鼓が鳴り響き、宮司・神職が参進し、本殿所定の座に着いた。国歌斉唱に続き本殿内陣の御扉が開かれ、海の幸、山の幸が供せられ、宮司は神前に進み祝詞を奏上し、英霊に感謝の誠を捧げた。
 勅使(唐橋在倫掌典)が御幣物を奉って参向、本殿所定の座に着く。宮司は御幣物を神前に奉奠し、勅使は神前で御祭文を奏上し、玉串を奉って拝礼した。
 勅使・随員下向後、「鎮魂頌」が奉奏され、宮司が玉串を奉って拝礼し、続いて特別参列者及び崇敬者総代が本殿に進み玉串奉奠した。午後3時、御幣物、神饌が徹せられ、宮司が御扉を閉じ、秋季例大祭当日祭は滞りなく修められた。
 靖國神社の境内にある遊就館では、NHK連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルである作曲家・古関裕而にちなむ特別展示「作曲家・古関裕而と英霊に親しまれた歌」が行われている。
 展示場には昭和15年に駐蒙軍の将校として出征し、現地で薨去した北白川宮永久王・陸軍砲兵少佐のコーナーがある。北白川宮永久王殿下は北白川道久・神社本庁前統理の父で、古関は「嗚呼 北白川宮殿下」(作詞:伯爵・二荒芳徳)を作曲した。
 古関は軍歌や戦没者に対する思いがあったとされ、「みたままつり」に昭和56、58、59年の3度、「暁に祈る」が題材の揮毫ぼんぼりを奉納している。その3点には、山が連なる絵に曲の楽譜の最初の部分が描かれていた。
 また、軍歌研究家の故八巻明彦氏の遺族から奉納された古関裕而直筆の色紙も展示されていた。「露営の歌」「暁に祈る」「若鷲の歌」「海を征く歌」「ラバウル航空隊」の5曲のイメージ画と楽譜の最初の部分が描かれている。昭和44年の古関の紫綬褒章受賞を記念して日本コロムビアから「古関裕而大全集」(LP盤7枚)が発売された際、収録曲の一部の解説を担当した八巻に古関が贈った色紙で、これらの曲は戦時中に兵士をはじめ日本中が好んで歌った。同展では各曲が作られた時代的背景も説明されている。