映画紹介「長崎の郵便配達」

映画「長崎の郵便配達」のポスター

 映画の題名は英語のノンフィクション小説「THE POSTMAN OF NAGASAKI」(長崎の郵便配達)から来ている。著者は戦時中にパイロットとして英雄となり、退官後は英国王室に仕えたピーター・タウンゼンド元空軍大佐。エリザベス女王の妹にあたるマーガレット王女の元恋人としても有名で、「ローマの休日」のモデルだとも言われている。その後、世界を回り、ジャーナリストとなった彼は、戦争では多くの罪もない人々が犠牲になったことを知り、一転して人道活動家となった。長崎で原爆の被害者の取材をしているときに谷口稜曄(スミテル)氏に出会い、彼の人柄に惹かれていく。尋常小学校を卒業し、14歳で郵便配達夫となった谷口氏は16 歳で配達中に被爆し、奇跡的に生き残ったが、全身に残された体の傷と心の傷は生涯消えなかった。後に核廃絶を世界に訴え続ける人生を送るようになる。
 川瀬美香監督は、谷口氏より本の出版についての相談を受け、ニューヨークでの谷口氏の講演を聞いていたが、父の意志を受け継ぎたいと願うタウンゼンド氏の娘であり女優のイザベル・タウンゼンド氏に出会い、その情熱に触れて、映画の制作を決心した。
 イザベル・タウンゼンド氏は家族と共に、父の著書や残した取材テープを頼りに長崎でその足跡をたどっていく。そこには父と谷口氏の友情の物語があった。生前父が取材した人、谷口さんの家族の家、カトリック教会浦上天主堂、住吉神社などが当時の面影を残していた。彼女は父の影を追いながら長崎に落ちた原爆の傷跡を一つ一つ確かめていく。
 同作ではジャーナリストとなったピーター・タウンゼンド氏の姿や谷口稜曄氏が被ばくした直後の全身がやけどした姿、そしてニューヨークの 国連本部で谷口氏がスピーチをした姿が映し出されている。ロシアのウクライナ侵攻によって、核戦争の危機が危惧される中、核兵器の是非について考えさせられる作品だ。
 8月 5 日(金) シネスイッチ銀座ほか全国公開

ピーター・タウンゼンド氏(右)と谷口稜曄氏(左)=©The Postman from Nagasaki Film Partners
長崎でのイザベル・タウンゼンド氏=©坂本肖美