東日本大震災追悼・復興祈願祭/鶴岡八幡宮

10年の節目、祈りを被災地へ

「仏教の祈り」を捧げる臨済宗円覚寺派管長の横田南嶺老師

 鎌倉宗教者会議主催(会長=吉田茂穗鶴岡八幡宮宮司)の東日本大震災追悼・復興祈願祭が3月11日、鶴岡八幡宮で執り行われた。今年は緊急事態宣言の中、新型肺炎の感染拡大防止のため関係者のみで開催し、インスタグラムでの生配信などを通して、それぞれの場所で祈りが捧げられた。
 同追悼・復興祈願祭は東日本大震災の1か月後に鶴岡八幡宮で行われて以来、11回目。鎌倉の神職、僧侶、司祭、牧師が心を一つにして震災の犠牲者を哀悼し、被災者に思いを寄せて祈りを捧げる。今年は神道30名、仏教30名、キリスト教10名が参加した。
 午後2時40分、奉仕する宗教者一同が雅楽と共に舞殿まで参進した。舞殿に昇殿した後、地震発生時刻の午後2時46分に鐘の音と共に全員で1分間の黙祷。一切の音が消え静寂になった。
 最初に鶴岡八幡宮をはじめ鎌倉の神社の神職30名による「神道の祈り」が捧げられた。修祓の儀が執り行われ、神職と参列者全員が共に大祓詞を斉唱した後、宮司一拝、献饌。
 斎主・吉田茂穂鶴岡八幡宮宮司が祝詞を奏上し、「東日本大震災で損害を受けた郷々の復興を、鎌倉仏教界ならびに鎌倉キリスト諸教会の主なる人々、集った人々と心を合わせ、10年の節目に合わせ祈願する。今も不自由な暮らしをしている人々が身も心も導かれ、復興の業に携わる人々が心を合わせ、苦難を乗り越え、心強くなり、日本が静まり守られるように心から祈りを捧げる。神仏の分け隔てなく一つの心で、世界に広がる新型コロナウイルスを一日も早く払い退けることを祈願する」と、大震災に見舞われた郷土に住み続ける人々に深く心を寄せ、心の安らぎと静まりを願い、一日も早い復興と新型コロナウイルスの終息を大神様に祈念した。
 次に「仏教の祈り」が導師の臨済宗円覚寺派管長・横田南嶺老師と鎌倉市仏教会30名の僧侶により執り行われた。導師が法要に込められた思いを読み上げる「香語(こうご)」を奉読した後、僧侶と参列者全員が観音経世尊偈を読経した。導師と共に参列者全員が「願わくばこの功徳を以て、普(あまね)く一切に及ぼし、我ら衆生と皆共に仏道を成ぜんことを」と「ご回向」を唱和し、真摯な祈りを被災地に送った。
 次に鎌倉市内キリスト教諸教会(カトリック教会、日本基督教団、日本聖公会、日本キリスト教会)の司祭、牧師による「キリスト教の祈り」が捧げられた。カトリック雪の下教会・古川勉主任司祭が始めの祈りを捧げ、日本聖公会・鎌倉聖ミカエル教会の北澤洋司祭とカトリック大船教会のマルコ・ターディフ主任司祭が聖書を朗読し、日本基督教団大船教会の松下道成牧師が祈りを捧げた。
 「世界は試練と困難に直面している。東日本大震災から10年、この10年をわかったように語ることはできない。10年苦しみ続けている人がいる。我々の想像を絶する苦しみと絶望の中で、聖書のヨブは嘆き、神に叫び続ける。永遠に続くかと思える沈黙。あなたが意識しなくても、神はあなたのすぐそばにおられる。共に祈ることが私たちを一つに結ぶことを知っている」
 カトリック雪の下教会古川勉主任司祭が主の祈りを、日本聖公会鎌倉聖ミカエル教会の北澤洋司祭が結びの祈りを捧げた。