両陛下が追悼と平和の祈り/日本武道館

終戦75年、全国戦没者追悼式

黙祷を捧げられる天皇皇后両陛下

 終戦後75年の8月15日、東京都千代田区の日本武道館で全国戦没者追悼式が開催された。当日は、天皇皇后両陛下が御臨席され、安倍晋三内閣総理大臣、衆・参議院議長、最高裁判所長官、各国務大臣、各都道府県代表、関係団体の代表ら約540人が参列し、約310万人を数える全戦没者に追悼の誠を捧げた。
 午前11時51分、開会が宣言され、全員が起立して両陛下を迎える。国歌斉唱に続き、安倍晋三内閣総理大臣が式辞。
 「祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦陣に散った方々。終戦後、遠い異郷の地にあって、亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、東京をはじめ各都市での爆撃、沖縄における地上戦などで、無残にも犠牲となられた方々。今、すべての御霊の御前にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げます。
 今日、私たちが享受している平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い犠牲の上に築かれたものであることを、終戦から75年を迎えた今も、私たちは決して忘れません。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧げます。我が国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えながら、世界が直面している様々な課題の解決に、これまで以上に役割を果たす決意です。現下の新型コロナウイルス感染症を乗り越え、今を生きる世代、明日を生きる世代のために、この国の未来を切り拓いてまいります」
 両陛下は標柱の前に進み深く一礼され、正午の時報に合わせ黙祷を捧げられた。両陛下に合わせ、参列者が同様に黙祷を捧げた。
 天皇陛下がお言葉を述べられた。
 「本日、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来75年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
 私たちは今、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、新たな苦難に直面していますが、私たち皆が手を共に携えて、この困難な状況を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います。
 ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」
 大島理森衆議院議長、山東昭子参議院議長、大谷直人最高裁判所長官の追悼の辞の後、昭和20年6月にフィリピン・ルソン島で戦死した、杉山甚作陸軍伍長の子・杉山英夫氏が遺族代表として追悼の辞を述べた。
 「75年前、8月15日は雲一つない快晴の暑い日でした。諸霊は我が身と最愛の家族を顧みず、ひたすら祖国の安泰を願い、健康な命をお国の為に捧げられました。懐かしい故郷の山、川を思い、愛しい妻子、優しい家族を夢見たことでしょうか。諸霊の御前に額づき、悲しみと痛恨の情を禁じえません。遺族は、最愛の家族を失った悲しみに耐え、一心不乱に助け合って懸命に生きて参りました。今日の安定な生活を取り戻すことができましたのは、人々の温かい思いやりと諸霊の御加護のおかげであると感謝申し上げます。平和な生活は諸霊の尊い犠牲の上に築かれたものであることを忘れず、御霊に誠を捧げ、とこしえに安かれとお祈り申し上げます」
 献花となり、安倍総理大臣、衆・参議院議長、最高裁判所長官、日本遺族会会長、各都道府県遺族代表、一般戦災死没者遺族代表、原爆死没者遺族代表、青少年代表、衆・参議院副議長、各国務大臣、各政党代表、各団体代表者が黄色菊を捧げた。最後に加藤勝信厚生労働大臣が献花して式典を終えた。(2020年9月10日付 767号)