新型コロナ後の新生活でお寺はどうなる

瑞田信弘・浄土真宗本願寺派称讃寺住職に聞く

瑞田信弘師

 少子高齢化や未婚者の増加で参加者を身近な人に限る「家族葬」が増え、葬式の参列者が減っていたが、新型コロナウイルスの感染防止対策がそれに拍車をかけ、このままでは存続が危ぶまれる寺院も出る状況になっている。著名人の法話講演や終活講座など地域活動にも力を入れている浄土真宗の瑞田(たまだ)信弘師に対応を伺った。(多田則明)

 ──称讃寺でも4月10日、宗教学者の島田裕巳さんを迎えての春の永代経法要の「お寺de講演会」が中止になりました。
 島田さんは琴平での「四国こんぴら歌舞伎大芝居」も見るつもりでしたが、講演会の中止決定後1週間ほどでそれも中止になり、来年に延ばしました。9月30日には毎年恒例の「心と命のフォーラム」を総本山善通寺の遍照閣で、解剖学者の養老孟司さんと精神科医の香山リカさんを招いて開く予定でしたが、遍照閣がコロナ禍で来年3月末まで閉鎖になり、これも来年に延期しました。
 お寺は大変です。大正大学地域構想研究所・BSR推進センターが行った「寺院における新型コロナウイルスによる影響とその対応に関する調査」によると、葬儀の会葬者数が減った(89%)、法事の中止や延期(88%)、法事後の会食の減少(68%)など影響が出ています。「細々と続いていた行事がこれで終わる可能性をひしひしと感じている」「法要のオンライン化なども検討しているが、檀家の多くが高齢者なので対応が難しい」などの声もあり、まさに存続の危機に瀕しています。BSRは「仏教者の社会的責任」という意味です。
 ──持続化給付金の支給は?
 宗教法人は事業税を納めていないので無理です。
 ──家族葬の広まりで、それでなくても参列者は減少していました。
 家族葬は、参列者は身近な家族、親族に限り、仕事上の義理での参列はやめるという趣旨でしたが、コロナの影響で参列者が家族だけ5人くらいになったりして、広い会場にバラバラに座っています。しかも、高松市が火葬場に同行できる人を5人に制限したので、僧侶が行くと親族は4人になります。他の人は葬儀会館で2時間待つしかないので、ご遺骨を迎えての繰り上げ初七日をしない例も増えています。自宅で本当の初七日をするといいのですが、そのままのことが多い。告別式の後、火葬場で収骨して、そのまま解散という葬儀が増えています。葬儀をしないでご遺体を火葬場に運ぶ直葬も多くなりました。
 この傾向が続くと葬儀社をはじめ仕出し屋や生花店など関連の業種も仕事が減ってしまいます。僧侶も3人で勤めていたのが2人か1人になり、浄土真宗では導師の横に役僧が付くのが普通ですが、ほぼ1人になっています。檀家が少なく、ほかの寺の葬儀に呼ばれるのを生業にしていた寺では収入が途絶え、存続の危機に瀕しています。
 ある料理店で感染者が出た原因が、数日前、店の人が法事に出たからというニュースが流れると、いくつもの法事がキャンセルされました。農村では田植えの繁忙期を避けるため5月の連休に法事をする家が多いのですが、そのニュースが連休前だったため、連休中の法事もほとんど中止になりました。
 三回忌、七回忌は家族だけででもしていたのが、十三回忌が境で、それ以降はやめる例が増えています。こうした生活様式が根付いていくとすれば、次の世代に法事文化が引き継がれなくなり、いずれは仏事が消滅し、運営できなくなる寺が増えるでしょう。それでなくても、後継者がおらず、廃寺になった寺が近くに数件あります。(5面に続く)