一燈園生活120年の「春の集い」

谷野寅蔵師が新当番に/京都・山科区

就任挨拶をする谷野寅蔵新当番

 京都市山科区にある一燈園(財団法人懺悔奉仕光泉林、代表・谷野寅蔵当番)を創始した西田天香師が、一燈園生活を始めて120年になる本年4月20日、恒例の「一燈園『春の集い』」が開かれた。今年は56年にわたり当番を務めてきた西田多戈止(たかし)前当番が退任して祷座(とうざ)となり、谷野寅蔵新当番が就任するお披露目を兼ねて開かれた。集まった全国の会員や各界の著名人らが西田前当番をねぎらい、新しく就任した谷野当番への期待と祝辞を述べた。谷野新当番は、一燈園での自らの歩みを紹介すると共に、当番を引き受ける際の決意を述べた。また、燈影学園少林寺拳法部の学生たちが合気道の演武を披露し、集いに花を添えた。
 西田前当番は、「天香師から当番を引き受けてから56年、94歳になってしまった。創始者である天香師が歩んだ跡が道になったので、自分の使命はその道を汚さずに守っていくことだった」と振り返った。当時、一燈園で共同生活をしていたのは230人で、天香師とともに托鉢の生活をしていて、その托鉢によって事業が起こった。「天香師は、『僧にあらず俗にあらず』と言ったが、裏から見れば『僧であり俗である』ことになる」と言い、西田前当番はその事業を守ることが自分の托鉢だと考えた。そして、「今日まで一燈園は伝統を守ることでいつのまにか50年たち、男子では私が最年長、同人は30人になった。しかし、共に歩む若い人がたくさん居てくれ、外部から勤めに来る人や、共に学ぼうという人もいる。園を出て外の世界を経験し、戻って継ぐ3世の青年たちもいる。行と祈り、また縁を持った皆様に支えられてきた」と、感謝を述べた。

挨拶する西田多戈止前当番・現祷座

 また西田前当番は「天香師の道を守るために資料館である香倉院を建て、トイレ掃除の行願を続けられたことをささやかな誇りとし、谷野当番ら若い人たちに後をお任せしたい」と挨拶した。
 来賓の瀧藤尊淳・和宗総本山四天王寺管長は、「天香師が四天王寺の太師堂に参詣し心から手を合わせ、行願を心を込めてされる姿を見て、当時の管長は大いに感銘した」と話し、伝統を受けつぐ谷野新当番への祝辞を述べた。
 世界トイレ協会日本理事で、トイレ専門企画会社「アントイレプランナー」代表の白倉正子氏は、大学生時代にトイレの重要性に気付き、一燈園と出会ってトイレ掃除の行願を体験した縁を語り、「世界トイレ協会の日本理事として一燈園に恩返しをしたい」と祝辞を述べた。
 谷野新当番は就任の挨拶で、一燈園の3世としての自分の歩みを紹介し、高校を出た後、韓国の高麗大学へ留学し「その時、外から一燈園を見て親の愛や一燈園に育てられたことに気づき、恩返しをしようと一燈園に戻った」という。
 新当番を引き受けることは昨年10月、全員で托鉢に街に出る「総路頭」の時に決断した。「苦渋の決断であり、西田前当番が生きておられるときに引き受けておきたい。責任を引き受けて皆様にお披露目をするのが、私の最初の仕事」と決意を語った。「一燈園は、事業部や各界の方々に支えられている。天香師、西田前当番の時と変わらず一燈園を応援して頂きたい」と挨拶した。