第3回ICRF懇談会/「宗教虐待」対策の問題点を指摘
宗教への偏見、不適切なカウンセリングのリスク

11月6日、ICRF(国際宗教自由連合)主催の第3回ICRF懇談会が都内で開催され、「『宗教虐待』対策の問題点〜精神医療を巡る観点からの警鐘〜」と題して、市民の人権擁護の会日本支部代表世話役の米田倫康氏が講演した。
米田氏は、2022年に厚生労働省子ども家庭局長通知として出された「宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A」に関して、宗教の自由の観点並びに精神医療や心理カウンセリングと絡めて問題点を指摘した。
講演の要旨は次の通り。
総論で述べている行政側の言い分は、あくまでも本来であれば虐待問題になるものだが、宗教という背景があるために、これまでは踏み込めなかった。ところが、今回は、宗教という背景があったとしても、躊躇なく踏み込んでいくというもの。ゆえに、ことさら宗教に対して差別的なものとか、偏見を煽るものではない、と説明している。しかし、実際の現場でそのように運用されるとは限らない。
Q&Aでは4つのカテゴリーで虐待の具体例をあげているが、「宗教だからこういう変なことをさせるのだ」という印象を植え付ける例ばかりだ。
親子の対立や価値観の相違による葛藤は、どこの家庭でも起こることだが、ことさら宗教を問題視し、親の信仰にのみ原因を求める風潮には疑問がある。特に、宗教的価値観を巡り子供の葛藤を引き起こすのは、社会で宗教に対する偏見に晒された結果だ。自分の家庭の宗教的価値観を馬鹿にされたり、否定されたりする経験を通して疑問を持ってしまうところにある。
子供を本当に助けたいのであれば、世間の宗教に対する偏見、ヘイト、憎悪といった問題を同時に解決することが必要だ。むしろその偏見ガイドラインを出すことでかえって、宗教への偏見が強まる。その結果、子供の葛藤や親の家庭内での不安がさらに高まる。この点が考慮されず、問題が家庭内での宗教教育、宗教虐待のみに向けられているのは問題だ。
国連人権規約など日本が批准している各種条約では、家庭内での宗教教育に関してちゃんと保障しているが、これを無視している。日本では、家庭内の虐待問題に対して親子の再統合ではなく、分離することに偏重しているという批判がある。実際それは子供の権利条約にも反している部分がある。そこに、宗教虐待という概念が十分に検証されないまま入ってくると、ますます家庭内での再統合ではなくて分離ということが起きてしまうだろう。
また、大きな問題は、このガイドラインが紹介する相談窓口では、おおむね宗教に偏見をもつ者や機関に誘導される危険性が大きい。
一番の懸念は、不適切な心理カウンセリングや精神科治療のリスクが一切考慮されていないことだ。そのリスクとして「助長される憎悪や恨み」「引き起こされる他責思考」「偽りの虐待の記憶」「自殺衝動・攻撃性誘発」などがあげられる。
たとえば、誘導的なカウンセリングを受けることによって偽りの性的虐待の記憶を持ってしまう例があり、米国では過去に大きな問題となった。同様に、自分がうまくいかないのは宗教的虐待を受けたに違いないと思い込み、親への一方的な敵意を引き起こす可能性もある。抗うつ薬の副作用による自殺衝動や攻撃性が誘発され、凄惨な事件を引き起こしてしまう場合もある。児童虐待の領域では誤判定による冤罪も問題となっている。宗教虐待という概念がそこに加わると宗教に対する偏見があおられ一層の混乱が引き起こされる懸念がある。ひいては、民主主義の根幹を支える宗教の自由を侵しかねないことが危惧される。


