地域を支える「関係人口」の視点
2025年11月10日付 829号
我が国は急速な人口減少が進んでいるが、現在まで有効な対策が打ち出されているとは言い難い状況にある。
その中で近年、人口減少対策として注目されているのが「関係人口」という概念だ。
島根県立大学准教授の田中輝美氏によると、「特定の地域に継続的に関心を持ち、関与するよそ者」(田中輝美著『関係人口の時代』中公新書)と定義される。
従来の地方自治体の政策は、子育てのしやすい町づくりなどを謳い、若い世代を中心に都市部からの移住者・定住者を増やすという施策が中心となっている。あるいは、観光の振興による交流人口の増加に力を入れる自治体も多い。ただ、これだけでは人の奪い合いとなり、人口減少の根本対策としては限界がある。
関係人口の考え方は、定住でもなく、観光のような一時的な訪問でもなく、何らかの形でその地域と継続的に関わるということだ。
人口増そのものを目指すというより、人口が減少した社会の再構築という意味合いが大きい(ただ、関係人口の増加が、結果的に移住者の増加につながることもあるという)。
田中氏は関係人口の代表的ライフスタイルとして次の三つをあげている。「買う」(=地域産品をインターネットで買う。ふるさと納税など)、「行く」(=地域のプロジェクトに関わる。祭りやイベントを担い手として支える。草刈りなどの作業を手伝う)、「働く」(=地域プロジェクトのアイデア出しやチラシのデザイン、書類作成。地域外で応援大使を務める、イベン
ト告知・集客など)で、地域に愛着を持って、つながりを持つ活動である。著書には、コミュニティへの参加や地域への短期滞在でつながりを育んだり、住民と関係人口が地域の課題を解決していく事例など各地の取り組みが紹介されている。
政府も今年6月、地方創生の推進と地域の社会課題への対応に向けて、「人口が減少しても多様な人材同士が影響し合い地域の活力を高める姿を目指すため、関係人口の量的拡大・質的向上(関わりの深化)を図る。具体的には、関係人口を可視化する仕組みを創設する」とした。実人数として1000万人を目指し、ふるさと住民登録制度を創設して、地域の担い手の確保や地域経済の活性化につなげるという。地域づくりの担い手不足という課題に対して、地域によって若者を中心に変化を生み出す人材が地域に入り始めていると、関係人口がもたらす可能性に言及している(総務省「『ふるさと住民登録制度』に係る閣議決定」)。
ところで、宗教あるいは宗教者と関係人口に関わる取り組みや政府の報告などは、筆者が確認した限りでは見られなかった。そのこと自体は、現代日本の政教分離の捉え方などからすればやむを得ないところではある。ただ、「つながり」をつくるということでは、宗教者が貢献できるのではないか。
また田中氏によれば、地方の住民には若者世代が地方から都市に行くのは仕方がないといった諦めの気持ち、「心の過疎化」があるという。人口減少云々ではなく、生まれ育った地域に誇りを持てず、こんな不便な地域に未来はないと自ら語る点にこそ問題の本質があるというわけだ。このような「心の過疎化」への対応も宗教者の役割と言っていいのではないか。
その場合も、あくまで地域の課題解決に貢献したり、各家族や地域住民など関わる人たちの幸福につながるための活動ということになるだろう。近年、自然災害が起きた時の避難民の受け入れなど、自治体と宗教施設との協力は広がっている。一方、宗教団体の社会貢献活動について、国民の認知度が必ずしも高くないといった調査もあり、いわば目に見える形での日常的な活動への理解を広げることも重要になっている。
宗教間の相互協力ということから言えば、現在の世界状況からは宗派を超えた平和への祈りが中心になるが、共通する目的としては、より良い国づくり、社会づくり、人としての成長、向上を導くといったことがある。
宗教施設は地域の伝統、文化の拠点である。また、人のつながりと信頼を築き、社会参加は、まちづくりのために必要な要素である。地域社会の枠組みを支え、人間の生き方を支えるという意味で、関係人口の活動に地元の宗教者が関わることができるのではないか。


