世界平和祈りの集い  宗教間対話で世界平和を

世界の宗教・宗派代表450人が参加 比叡山延暦寺


祈りを捧げる宗教・宗派の代表たち=8月4日、滋賀県大津市の延暦寺

 宗派を超えて内外の代表が平和を祈る39回目の「世界平和祈りの集い」が8月4日午後、滋賀県大津市の天台宗総本山・比叡山延暦寺で開かれた。宗教間の対話と協力による世界平和の実現を目指し、世界の諸宗教・宗派の代表ら約450人が参加。「集い」は1986年にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世の提唱で、イタリア・アッシジで諸宗教の指導者が祈りを捧げた「平和祈願の日」を受け、翌87年に当地で開かれた「比叡山宗教サミット」の精神を引き継ぐもの。「平和の鐘」が響く中、参加者は共に平和の祈りを捧げた。

 第1部「平和の式典」は延暦寺会館で開かれ、細野舜海天台宗宗務総長が、熊本地震の被害者に見舞いの言葉を述べた上で「大国による覇権主義的な行動で戦後秩序が乱れ、世界はかつてない試練の時代を迎えている。今こそ宗教宗派を越えて共働し、連帯の絆を強めたい」と述べた。
 続いて、草創期から「集い」を支えてきた世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の杉谷義純会長の講演(2面に掲載)があり、世界の子供たちの福祉と教育支援金として、参加者一同の名で目録が日本ユニセフ協会の早見研専務理事に手渡された。
 第2部は一隅を照らす会館前の「祈りの広場」に会場を移し、初回の比叡山メッセージを仏教とキリスト教を代表する若者が朗読。続いて諸宗教の代表が登壇し、「平和の鐘」が打ち鳴らされるのに合わせ「平和の祈り」を黙祷で捧げた。
 登壇したのは、教派神道連合会大本の出口紅教主、全日本仏教会副会長・天台真盛宗の武田圓寵管長、日本キリスト教連合会委員長・日本聖公会の上原榮正首座主教、神社本庁総長・石清水八幡宮の田中恆清宮司、新日本宗教団体連合会理事長・妙智會の宮本惠司教団會長、日本ムスリム協会の柏原良英会長、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の戸松義晴理事長、世界連邦日本宗教委員会議長・神道扶桑教の宍野史生管長、および主催者代表で天台宗の藤光賢第259世座主(名代・堀澤祖門天台宗探題大僧正)。
 次いで、藤光賢天台座主の「人々が不安に苛まれている時にこそ、宗教者は対話による相互理解を深め、共に祈りを捧げつつ、世界平和を希求し続けねばなりません」とする主催者代表挨拶が読み上げられた。
 続いて海外から、世界仏教徒連盟のパロップ・タイアリー会長とローマ教皇庁諸宗教対話省のジョージ・ジェイコブ・クーバカド長官からの平和のメッセージが、それぞれ代読された。最後に、閉式の辞を延暦寺の獅子王圓明執行が述べ閉会。来年は40周年記念大会が国立京都国際会館や延暦寺などで開催される予定である。
 式典後、大本の出口紅教主は「こういう素晴らしい集いが続いて来年40周年になるので、がんばって準備したい」と、神道国際学会の三宅善信理事長(金光教春日丘教会長)は「国連安保理の常任理事国が国際法を無視して戦争を始めるような時代になった。宗教者も集まって対話するだけでなく、社会とりわけ若い世代に発信することが必要なのではないか」とそれぞれ語った。


平和は祈りと対話を続ける勇気が支える


比叡山宗教サミット 杉谷義純・世界宗教者平和会議日本委員会会長

講演する杉谷義純WCRP日本委員会会長=8月4日、比叡山延暦寺


 比叡山宗教サミット39周年「世界平和祈りの集い」の「平和の式典」において、1987年に開かれた第1回「集い」の事務局長を務めるなど草創期から支えてきた世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の杉谷義純会長(京都・妙法院門主)が、世界的な宗教対話の歴史を踏まえ、初回開催までの経緯や精神について講演した。

アッシジの精神
 1981年に来日したローマ教皇ヨハネ・パウロ2世は、駐日ローマ法王庁大使館に日本の宗教代表者を招き、「世界平和の実現は、宗教間の理解と協力がもっとも重要であり、その精神は日本仏教の指導者である伝教大師最澄が言われた『己を忘れ他を利するは慈悲の極みなり』という言葉につきる」と述べた。その席に招待されていた山田恵諦(えたい)第253世天台座主がその言葉に深く感銘したことが、比叡山宗教サミット「世界平和祈りの集い」を開催する大きな契機となった。
 1986年、ヨハネ・パウロ2世の提唱で、イタリアのアッシジに世界の宗教者が集まり、互いの信仰の相違を乗り越え、貧困と紛争のない、人々が平安に暮らせる地球社会の実現に祈りを捧げる「世界宗教者平和の祈り集会」が開催された。
 その「アッシジの精神」を引き継いで1987年8月、日本宗教連盟協賛の教派神道連合会・全日本仏教会・日本キリスト教連合会・神社本庁・新日本宗教団体連合会に加え、WCRP日本委員会・世界連邦日本委員会の7団体により「日本宗教者代表会議」が結成され、人類共同体の実現を目指し、宗教間の対話と協力を目的として比叡山宗教サミット「世界平和祈りの集い」が開催された。以後、毎年8月に開催されている。
 1997年の第10回集い「奪い合いから助け合い」には19か国2000人が参加し、明石康国連人道問題担当事務局長とフランシス・アリンゼ・ローマ法王庁諸宗教対話評議会長官が講演した。その後、参加者は8月6日、広島の「原爆の日平和祈念式典」に出席した。

宗教対話の歴史
 世界的な宗教対話の歴史では、1893年のシカゴ万国博覧会で開かれた万国宗教会議が知られている。世界中の歴史的宗教の代表者を一堂に会し、意見を交わすことを目的とした会議で、日本からは臨済宗の釈宗演、天台宗の芦津実全、真言宗の土宜法龍、浄土真宗の八淵蟠龍が参加し、教派神道から神道実行教の柴田礼一、日本キリスト教会から小崎弘道が参加した。同会議は、東洋の宗教・精神文化が西洋社会に紹介される大きなきっかけになった。
 1962年から65年にかけて、ローマ教皇ヨハネ23世のもとで開かれ、パウロ6世が継承した「第2バチカン公会議」に教会の現代化をテーマに多くの議論が行われ、エキュメニズムの推進が提唱され、カトリック教会(バチカン)が公式に諸宗教に対して開かれた姿勢を勧奨する公会議文書が発表された。ヨハネ・パウロ2世の宗教間対話・協力の提唱も、その流れを受けたものである。

継続が大切
 宗教サミット1周年に際しての主な参加者の言葉を紹介する。
 カトリック教会の白柳誠一枢機卿は「第1回があって第2回がなければ、これを継ぐ者は生まれることはできない」と、山田座主は「宗教サミットは続けなければならない。続けることに意義がある。始めたら最後の一人になっても祈り続ける覚悟が必要」と、広瀬静水教派神道連合会会長は「比叡山宗教サミットの精神は、1年を経た今日その色があせるどころか、ますますその輝きを増している」と語っている。
 宗教協力が成立する要件は、対等であること、相手に敬意を払うこと、相手に深い関心を持つこと、人類の課題に対して共に祈り、実践を通じて理解を深めることで、宗教サミットの精神を次の世代に継承していきたい。