墓じまいと地域共同体の変化
2026年8月10日付 838号
お盆の時期を迎えた。多くの人が、墓参り、先祖に思いを馳せる時であり、故郷を離れた人にとっては、帰省で親族や地域との関係を取り戻す機会である。
一方で、少子高齢化の進行もあって、墓じまい(改葬)が増え、樹木葬や散骨への関心が高まるなど、葬送に変化が見られる。厚生労働省のまとめによると、2024年度の改葬件数は17万6105件で過去最多となっている(厚生労働省「令和5年度衛生行政報告例」)。
墓じまい増加の背景には、お墓を受け継ぐ者がいないこと、地方から都市部への移動で墓が遠くなったといった社会的な構造の変化がある。
こうした変化によって、先祖とのつながり、親族や故郷とのつながりが薄れること、さらに地域社会の次元では寺院の存続を懸念する声もある。個人のライフスタイルの変化にとどまらず、共同体の喪失など大きな社会的変化をもたらすことになるわけだ。
その意味でも、先祖供養の意識、慰霊の形、宗教的な意識がどのように継承されるかが重要になると思われる。
例えば、「民俗学者の柳田國男の説では、日本人は『死者は山の上に留まり、子孫を見守る』と信じてきたという。神や仏などの『目に見えない存在に見守られている』という意識こそが、自己抑制を促し、他者への責任感を育む土壌ともなってきた」、「先祖があって自分があり、その自分を通して次世代を育む。この『過去—現在—未来』という時間軸の縦糸を大切にすることが、社会の秩序を維持する『精神的な基礎石』となってきたことは否定できない」との指摘もある(日本時事評論 令和8年3月6日付「先祖という縦糸を失う危機」)。
いずれにしても、神仏、先祖への意識は、日常のレベルで個人の倫理感の育成や社会の共同体の維持に重要な役割を果たしてきたことは確かである。
では、これらを維持、継承していくことをどのように考えるか。
宗教教育という観点で言えば、米国の例ではあるが、「子供と宗教についてよく話す」家庭が5割超、家庭で日常的に何らかの宗教的活動を行っている保護者も約6割いるという(米ピューリサーチセンター、2025年12月)。
実際に家庭で行っている宗教的な活動は、「夜の祈り」(46%)、「食前の祈り」(43%)、「宗教的な物語の朗読」(43%)、「宗教音楽を聴く」(37%)、「宗教的な美術工芸品をつくる」(28%)などである。また、幼少期に家族の中で宗教を大切にしてきた人の半数以上が、現在も宗教が非常に重要だと答えている。
宗教教育や宗教的活動を通して、子供が「自己を超越した存在」を感じ取ることができれば、その後の人生に大きな影響を与える。特定の宗教団体に所属していなくても、例えば共同体における歴史的伝統や文化なども含めて、家庭の内外で学ぶことは、個人の人生の充実はもちろん、社会の安定にもつながるはずだ。
墓じまいが増えることは、家族や地域が抱える様々な事情からやむを得ない面があるが、上記のように先祖とのつながりを意識することで育ててきた宗教的価値を引き続き継承していくための教育、体験は必要だと思われる。
もちろん特定の宗派に限るのではなく、宗派を超えた協力によって人間が持つ普遍的な宗教性に働きかけることができれば、地域共同体の復興に少しでもつながるのではないか。


