少子化時代の地域社会モデルと宗教
2026年6月10日付 836号
昨年の日本人の出生数が前年比1万7000人減の67万1236人だったことが、今月3日、厚生労働省のまとめで明らかになった。10年連続で過去最少を更新した。
また、令和7年に実施された国勢調査の速報も先月末に公表されたが、昨年10月1日時点の我が国の人口
は約1億2305万人で、5年前の2020年から309万6000人余り減少し、減少幅は過去最大となった。都道府県で見ても人口が増加したのは東京都と沖縄県のみで、他の45道府県で減少した。東京一極集中が大きな要因の一つと見られている。逆に、人口が10%以上減少した自治体も全体の4分の1に上っている。
ちなみに政府は、今年4月から「子ども・子育て支援金」の制度を導入した。社会全体で子育てを支えるという理念で、公的医療保険に上乗せして徴収されるものだ。ただ、支援の恩恵を直接受けることのない単身者などからは「独身税」といった批判も聞こえる。
いずれにしても、当面は少子化、人口減少の進行は避けられず、行政サービスの維持など人口が減ることを前提にした地域社会のモデルを構築することが、少子化対策と共に重要課題になっている。
そうした地域社会のモデルという点で、宗教が果たし得る役割を考えてみたい。
本欄でも度々言及したが、宗教施設が文化の発信や防災の拠点として地域社会に貢献している例は多い。AIなどの技術を活用するような取り組みではなくても、共同体、社会的なつながりを作るという点で地域の伝統と文化を担う宗教はこれまでも重要な役割を果たしてきた。現在も、地域の課題を見据えた活動をする宗教施設は多い。
宗教者のこうした社会貢献の基礎になっているのは信仰であり、利他の精神であるが、相手が信仰を持つかどうかということ以上に、人間の利他的精神を呼び起こし、地域の安定につなげることも宗教が社会にもたらすことができる良き影響だろう。
宗教者の社会貢献活動には「活動の実質的な担い手としての機能に加えて、思いやりの精神を育てる公共的な場を提供する機能をも併せ持っていよう。無自覚の宗教性は、宗教者の利他的な実践によって、社会にさらに広く浸透する可能性もあろう」(稲場圭信・大阪大学教授『利他主義と宗教』弘文堂)と指摘されるように、道徳的な面から地域共同体の形成、特に将来に向けて次世代の育成に貢献するのも大切な役割である。
一方で、宗教団体が「地域社会の交流や安定に貢献している」「災害時の救援やボランティア活動など社会的に貢献している」といった認識が国民の間で以前に比べて低下しているという(公益財団法人庭野平和財団)。社会貢献の背景にある利他の精神、宗教的価値を地域で身近に感じられるような取り組みも重要であろう。
人口減少という重大な課題に直面する現代において、家庭や学校を含めたつながりを取り戻し、次世代を育て、伝統と道徳的な価値を継承しながら地域共同体を形成していく。この点で宗教が果たし得る役割は大きいのではないか。


