家庭連合の解散と信教の自由

国際宗教自由連合シンポジウム/東京

4月27日、都内で開催された国際宗教自由連合のシンポジウム

 宗教の自由を守る活動を展開する国際宗教自由連合(ICRF、東和空委員長)は先月27日、都内でシンポジウムを開催(主催・国際宗教自由連合、共催・宗教新聞社)、各宗派の宗教者をはじめ約70人が参加した。
 ICRFは、1983年に米国で発足した宗教自由連合が始まり。98年には世界の主要4カ都市で国際会議を開催した。東京でも「新しい世紀と宗教の自由日本会議」が行われ、「宗教の自由についての共同宣言」が採択された。
 近年は、世界的に宗教的不寛容、専制主義国家による宗教弾圧などが危惧されるようになり、わが国でも宗教の自由への認識が薄れ、新宗教への偏見や宗教ヘイトの風潮も放置されている。それに対して、ICRFは宗教の自由の重要性を訴え、国際的な協力の下で活動を展開するとしている。
 この日のテーマは「家庭連合の解散と信教の自由」で、3月4日に東京高等裁判所が世界平和統一家庭連合に対する解散命令判決を出した後の状況を現役信者が報告。それを受けて、他宗派の宗教者から意見が出された。
 開会の挨拶に立った東委員長(聴行庵住職)は、「この会には、様々な宗教者、価値観を持った方が来られている。人権、自由、民主主義に向き合い、それをベースに叡智を集めたい」と述べた。
 次に、高裁判決以後の状況について、家庭連合の二人の現役信者が報告した。
 新宿区の教会で教会長を務める岡光君啓氏は、判決の当日に清算人がやってきて建物や資産を引き渡し、退去を命じられたことを振り返り、「単なる不動産の差し押さえではない。信仰のよりどころが踏みにじられた」と述べた。
 信者の葬儀を教会で行うことは認められたが、教会長として行うことは認められなかった。信者の悲しみを癒して儀礼をつかさどることもできず、祈祷室での祈祷も制約された。岡光氏は、「信教の自由は妨げないという。祈るだけであればどこでもできるという声もある。しかし、信仰は個人の内心だけにとどまるものではなく、場所、儀礼、共同体があって生きる力となる」と述べた。そして、「家庭連合に起きていることが、明日、皆さんの宗教に起きないという保証はない。良心に従い、聖なる場で祈ることができる社会を取り戻したい」と訴えた。
 二世の女性信者は、子育てなど生活を支える共同体として機能してきた教会を失った影響は大きいと思いを語った。教会に行きたいと泣きながら訴える幼い子供に応えることができない無念さや、働く環境を失くし不安を感じているといった声を紹介。立場上、清算団体の職員として教会の信者に解雇通知を出さなければならないことに精神的ショックを受けて突発性難聴で入院した信者もいるという。
 二人の報告を受けて、四人の宗教者が登壇した。
 バプテスト教会の黒瀬博牧師は、現役信者の報告に対して「怒りとも悲しみともいえない複雑な気持ちだ。将来的にはキリスト教会や他のすべての宗教が同じ目にあうのではないかと懸念される。すべての宗教者は声を上げなければならない」と述べた。
 黒瀬氏はまた、「教会を閉鎖するなど、共産主義がやったことだ」と批判。「家庭連合の方には、未来に向けて記録を残していただきたい。将来、この問題は必ず神によって裁かれ、未来の人々によって裁かれる。書き記しておくことが大切だ」と訴えた。
 浄土真宗の酒生文弥住職は、「単純に法人格消滅というだけでなく、建物もすべて奪われるというのは恐ろしいことだ」と述べた。
 そしてアメリカの例などに触れ「Freedom of Soul(魂の自由)」こそ最高に守るべきものであり、精神的自由から行動の自由へつながるという考えは仏教でも重要な概念だと説明した。
 また、駐日イスラエル大使との懇談から「我々は全て神の子であり、一人一人に神が宿っている」との話を紹介し、神道、仏教、あらゆる宗教が和合するためにも日本がこのままではいけないと語った。
 臨済宗の水田真道住職は、「お話を伺い、心臓がつかまれるような苦しさを感じた。私は宗教者として、寺が解散命令を受けたらどうなるかと考えてみた。住まいも礼拝施設と一体で、私は代表役員でなくなり、住むところも失う」と述べた。
 水田住職はSNSなどで情報発信を続けているが、「仏教の住職たちは、なぜ自分事としてとらえないのか。もっと危機感を持ってもらいたい。全国の宗教者が立ち上がるべき危機だ」と訴えた。
 また、昨年10月に文科省が示した『指定宗教法人の清算に係る指針』に言及し、清算人は清算事務に支障のない範囲で施設の利用を許諾する等、信教の自由に配慮することが望まれると記されており、支障がなければ自由に礼拝、祈祷ができるはずだと指摘した。
 アメリカのジョージ・スターリングス大司教は、「宗教の自由であれ、政治的、社会的自由であれ、神を礼拝する権利であれ、自分の言語や信仰体験で神を表現する権利がある。信教の自由とは、神とどのような関係を結ぶかを自分自身で決定するための制度的保障である。こうしたことを日本政府は理解していない」と指摘。「政府が宗教団体や信者のコミュニティーに対して、あなたたちのやり方で神を礼拝することはできないとか、宗教共同体として集まることを阻止するために法的措置を用いることができると言っているとき、政府は自身を神としてしまっている」と疑問を投げかけた。
 その上で、「家庭連合に起こっていることは、どの宗教団体にも起こり得る」として、宗教者として信教の自由を守ることを訴えた。
 後半は質疑応答が行われた。
 神道の関係者は、家庭連合の状況は「非常に心が痛い」とし、神道、仏教、キリスト教、イスラムが一つになることが必要と訴えた。
 日本に30年間滞在しているアメリカの牧師は、政府の宗教理解に疑問を呈し、「民族や言語に関わらず、私たちは一つだ」と述べた。
 学者からは、高裁決定が家庭連合は将来にわたっても不法行為をする可能性があるから解散を命じたとした点について「可能性だけであれば、どの宗教団体にもあてはめることができる。これが高裁の判断なのか」と批判した。
 東委員長は閉会の辞で、「今回のやり方がどれほど多くの人の心を傷つけているかを国民に知ってもらい、さらに学者、法律家をはじめ様々な方の叡智を発展させていきたい。今日感じたことを目の前の人に伝えてほしい。それが自由を希求するエネルギーだ」と述べて締めくくった。
 解散命令に関して、家庭連合は最高裁に特別抗告を行っているが、仮に高裁判断の延長で同様の決定が下された場合、それが判例となって自由社会の根幹を打ち砕くことになりかねないとの声も有識者からは上がっており、この問題が宗教界全体に重大な影響を及ぼす可能性が高い。