美術・「皇后のまなざし」明治神宮ミュージアム
令和7年3月29日から東京都渋谷区の明治神宮ミュージアムで、「皇后のまなざし」展が開催されている。新しい時代の皇后として、女子教育の振興や社会福祉、殖産興業の一端を担った洋装の積極的な導入等、今日の皇室にも受け継がれている昭憲皇太后の事績が明治神宮所蔵の品々をとおして紹介されている。
明治という時代は、建国以来さまざまな変遷を経て近代国家への大きな一歩を踏み出した時代である。昭憲皇太后は幕藩体制の終焉より未曾有の国難の中、嘉永三年(1850)に御生誕された。明治元年(1868)に明治天皇の皇后となられ、以後は国民の先頭に立ち国造りに精励される天皇をお支えになり、宮中の伝統を守りつつ、皇后のお立場から我が国の近代化にお力を注がれた。
聖徳記念壁画館壁画下図 皇后宮田植御覧(近藤樵仙作 大正15年 明治神宮蔵)は明治8年6月18日に皇太后が水田に行啓になり農夫たちの様子をご覧になった光景をえがいたもの。明治6年5月の皇城焼失の後、新皇居完成までの間、お移りになった赤坂の仮皇居には水田があり、敷地内に農夫を住まわせ稲作に従事させていた。
聖徳記念絵画館壁画下図 東京慈恵医院行啓(満谷国四郎(みつたにくにしろう) 大正15年頃 明治神宮蔵)は、明治20年5月9月に東京慈恵医院の開院式に行啓され、病室をご慰問された昭憲皇太后を描いたもの。構図の中央にお立ちは皇太后、前方で手渡しているのが、有栖川宮熾仁(たるひと)親王妃董子(ただこ)殿下。手交の品は犬の玩具と思われ、大まかにではあるが赤い前掛けや特徴的な白と黒の毛色が確認できる。
昭憲皇太后御料 源氏篝火(ががりび)蒔絵料紙硯箱(植松抱民(ほうみん)作 明治中期 明治神宮蔵)は明治27年4月、漆工競技会にて昭憲皇太后がお買い上げの品、本品は『源氏物語』第27帖「篝火」を主題にした品。初秋の宵、光源氏が玉鬘(たまかずら)を訪ね恋心を篝火の炎にたとえた歌を送る場面である。
昭憲皇太后御料 御拝礼服(明治後期 明治神宮蔵)は明治44年(1911)5月、昭憲皇太后が伊勢の神宮にご参拝の際にお召しの御拝礼服である。ドレスは白地に唐花尾長鳥の丸文に藤菱文、コートには蝶文が施され、伝統的に有職文様で構成されている。『明治天皇紀』や『昭憲皇太后実録』には、皇太后が内玉垣門に到着されると雨はやみ、薄日が差し込む中、参拝される様子が記録されている。
会場:明治神宮ミュージアム(明治神宮境内)
会期:令和7年3月29日(土)から令和7年6月22日(日)まで
休館日:木曜日(但し5月1日(木)は開館)
開館時間:午前10時から午後4時30分まで(入場は閉館の30分前まで)
お問い合わせ:03-3379-5875






