国際宗教自由連合日本委員会・4か都市巡回講演会
「解散請求」は重大な人権抑圧
マルコ・レスピンティ氏らが基調講演

12月8日、国際宗教自由連合(ICRF)日本委員会(伊東正一委員長)が主催する4か都市巡回講演会東京大会「日本の信教の自由と民主主義の危機」が東京・中央区の会場で開催され、400名が参加、同時にYouTubeで全世界にライブ配信された。
ICRF副委員長で拓殖大学国際日本文化研究所客員教授のペマ・ギャルポ氏が主催者挨拶をしたのち、宗教の自由と人権に関するWeb雑誌『Bitter・Winter』担当ディレクターのマルコ・レスピンティ氏が基調講演を行った。同誌は欧米をはじめ世界の宗教の自由と人権を調査し、欧米でも大きな影響力を持っている。
「人間は創造主によって、ある侵すべからざる権利を与えられている。第一は生存権であり第二は宗教または信教の自由だ。宗教または信教の自由から他のすべての人権が生まれる。ゆえにこれは最も重要な権利であり、個々人のみならず社会全体、さらには全人類にかかわるものだ。しかしながら、今日の世界で最も脅かされている人権だ。民主主義国家でさえこの権利を制限され否定されることがある」
レスピンティ氏は基調講演でこのような前提から始めて、2022年7月8日安倍晋三元首相の暗殺事件以降、日本で起こっている世界平和統一家庭連合(家庭連合)が直面する困難な状況について議論を進めた。同氏は、「日本政府による家庭連合に対する解散命令請求は、重大な人権の抑圧であり、民主主義に対する攻撃。それは自由の解体である」と結論づけた。
「健全な社会の極めて重要な要素であり、真の民主主義の特徴は、すべての人に対する宗教、信念、信条の自由であること」
「日本国民の『宗教または信条の自由』の権利を守ることは日本政府の義務であり、真の民主主義の証だ。家庭連合やその他の宗教の信者の『宗教または信条の自由』の権利を侵害することは、これらの団体の信者・非信者を含む、あらゆる宗教的信条を持つすべての日本国民、そして全世界に対する不正行為である」
レスピンティ氏はこのように結び、すべての宗教が互いの違いを超えて、この解散請求の再考を求める声をあげるよう呼びかけた。
二人目の基調講演者として世界平和統一家庭連合の田中富広日本会長が登壇した。田中会長が公の場に登場するのは、2年前の記者会見以来初めてで、注目を集めた。
田中会長は、まず、「平和の原点は家庭にあるという主張をよしとせず、国家の礎は家庭にあるという主張をいぶかしく思い、さらには、人は永生するという人生観を真っ向から否定する無神論・共産主義の思想に立つ勢力」の攻撃とメディアの偏向報道により解散命令請求にまで至った現状を報告。この間に、信者の真実の声は政府には届いていないばかりか、多くの被害を受けている実情を訴えた。その上で、政治的都合で解散請求に至ったことに対する疑問点を7項目にわたり率直に提示した。
その第一は、「作られた被害者の問題」があると述べた。「政府が解散事由の根拠にしている、過去の民事案件の『被害者』と称される方々の中に、拉致監禁・強制棄教を通して当会を脱会した方々が多数含まれている」点をあげた。政府は脱会者たちの証言のみに頼り、拉致監禁を経験しながらも棄教しなかった信徒の証言を聞かないのは、「国民を誤導し、法の支配に立つ民主主義を根底から崩壊させてしまうことになりはしないか」と問いかけた。また、自民党総裁の「関係断絶宣言」の根拠が示されず、実効性も不明瞭な点。献金行為を宗教的行為ではなく消費者行為として扱うのかという点。解散命令請求の事由は刑事案件のみとしてきたのに、一夜にして民事案件も入ると解釈変更し、閣議決定した内容を覆した点などを挙げた。
その上で、「この度の一連の政府の動きは、宗教に対する政府介入のハードルが一段と下げられたことを意味する。今、私は日本の民主主義が壊れ始めていると危惧している。信教の自由・人権の侵害は、人類の普遍的な人権の崩壊を意味するからだ」として、この問題が一宗教団体にとどまらず、全ての宗教の課題であり、民主主義の根幹を揺るがす問題であることを共有してほしいと結んだ。
4か都市巡回講演を主催したICRF日本委員会に対して、ドナルド・トランプ米国次期大統領宗教顧問のポーラ・ホワイト牧師から特別メッセージが届き、大会プログラムの中で公開された。

ホワイト牧師は、「国連の宗教の自由に関する報告者は、マイノリティ宗教に対する宗教の自由の侵害の可能性を調査するために、日本に訪問したいと日本政府に公式に要請した。しかし日本国はそれを受け入れなかった。このことは、日本の宗教の自由に関して世界中で深刻な懸念を引き起こしている。我々米国人は、メディア、政府、法務省の一部が情報を秘匿し、国民に事実を知らせていないことを懸念している。神が日本を限りなく祝福し、全世界の自由のための日米同盟が祝福されますように」と語った。
東京大会は、7月22日の総会で採択された「宣言文」を代表が読み上げて閉会した。
東京大会に先立ち、レスピンティ氏は広島を訪問。6日に宗教者・有識者懇談会で基調講演をし、7日には、広島の爆心地を訪れた後、平和記念公園・慰霊碑前から平和人権メッセージを全世界に発信した。
4か都市巡回講演は、6日広島、8日東京、9日名古屋、10日の福岡で開催。名古屋大会は元武蔵野女子大学教授の杉原誠四郎氏が、福岡大会はICRF日本委員会顧問の大塚克己氏がレスピンティ氏と共に基調講演を行った。福岡会場近くでは、基本的人権・信教の自由を守る九州の会が主催する「拉致監禁・強制棄教」の被害実態を示すパネル展が開催されていた。レスピンティ氏をはじめ大会参加者もパネル展を見学。生々しい状況の写真資料と被害者の証言に触れ、驚きを隠せない様子だった。