美術/明治天皇と宮中の文化

明治神宮ミュージアム

 12月21日から東京都渋谷区の明治神宮ミュージアムで、「明治天皇と宮中の文化」展が開催されている。明治維新によってもたらされた近代化と日本の伝統が新旧一体となった当時の宮中文化の一端が、明治天皇御物や昭憲皇太后御物などを通して紹介されている

 明治以降の宮中においては、明治4年ごろを境に明治天皇御親ら先頭に立って、わが国の近代化を図る一環として、日常においても軍服をはじめ洋装をお召しになる機会が増えていた。一方、明治天皇は宮中祭祀などにおいては伝統的な装束をお召しになることを定められた。

 明治の宮中文化は、いずれもが洋風化するのではなく、良い所は残すという正に温故知新の気風に象徴され、今に受け継がれる明治天皇の御物においても平安時代からの様式を踏襲する装束と新しく制定された軍服などが混在している。

 同展では、明治天皇の御物や皇族の御品などの宮中で使用された品々の中から装束や調度、明治天皇の御宸筆御製や女官が書き残した和歌などが展示され、また、軍服など明治の近代化を象徴する品も展示されている。

 明治天皇御料 陸軍御制服(明治19年、明治神宮蔵)は欧州各国に倣い明治19年7月6日に改正されたもので、肩章のみ特別に用意され、後は陸軍大将の同じ形式となっている。同年11月の天長節観兵式に天皇はこの御正服をお召しになられた。明治天皇御製 御色紙 孔明(明治14年、明治神宮蔵)は明治天皇の外祖父である中山忠能が嘉仁親王(後の大正天皇)に関する上申書一冊を奉呈した際に拝領したもので、中国三国時代に諸葛孔明がその主君・劉備とその子劉禅の2代にわたって仕えた姿を、明治天皇と嘉仁親王に仕える忠能に例えたものと考えられている。

 昭憲皇太后御料 御衝立(土佐光章、江戸後期~明治初期、明治神宮蔵)は昭憲皇太后が宮中でご使用になられた衝立で、両面には「桜に抜頭」と「紅葉に還城楽」が描かれている。筆者は土佐派末期の土佐光章で、土佐派の特徴である明るい原色を多用する表現法が認められる。昭憲皇太后御料 榮花物語(原本:平安時代後期成立、明治神宮蔵)は江戸時代に製作された奈良絵本と呼ばれる絵入り彩色写本で、女官小池道子が入手し、昭憲皇太后に献上したものである。

会場:明治神宮ミュージアム(明治神宮境内)

会期:令和6年12月21日(土)から令和7年3月9日(日)まで

休館日:木曜日(但し令和7年1月2日は開館)

開館時間:午前10時から午後4時30分まで(入場は閉館の30分前まで)

※初詣期間中の開館時間延長あり

お問い合わせ:03-3379-5875

明治天皇御料 陸軍御制服(明治19年、明治神宮蔵)
明治天皇御製 御色紙 孔明(明治14年、明治神宮蔵)
昭憲皇太后御料 御衝立(土佐光章、江戸後期~明治初期、明治神宮蔵)「紅葉に還城楽」
昭憲皇太后御料 榮花物語(原本:平安時代後期成立、明治神宮蔵)