初代社主・松下正寿

2024年12月10日付 818号

 NHKの新プロジェクトX旧作アンコールでホテルニュージャパンの火災と、麹町消防署永田町出張所・特別救助隊による救援が放映された。昭和57年2月8日深夜のことで、天地子も翌朝、テレビを見て驚いた。本紙の初代社主・松下正寿の事務所が同ホテルにあったからだ。あわてて秘書に電話すると、同夜、先生は帰宅していて無事だというので胸をなでおろした。
 松下社主は以前から同ホテルに事務所を構え、三笠宮崇仁親王やソウルから李方子(まさこ)女史らを招いてのパーティーなども同ホテルで開いていた。国会議事堂に近く、自民党の藤山愛一郎や松野頼三も事務所を構え、高級ホテルの一つだった▼不思議な縁は、5年ほど前に泊った奈良のゲストハウスで、救援活動に参加した元消防隊員に会ったこと。今は秩父市に住んでいるという老紳士と深夜まで話し込んだ。
 松下社主の母・亀徳(きとく)しづは、八戸市出身の作家三浦哲郎の小説『しづ女の生涯』のモデルで、近代助産婦の草分け。その縁で社主の追悼集に「温顔」という文章を寄せてもらった。昭和56年にTBSで『しづの生涯』が 大空眞弓の主演でドラマ化され、当時、赤坂のTBSまで社主らと試写会に行ったのも懐かしい。
 東京にいた頃は、社主が85歳で亡くなったクリスマスイブの12月24日、多磨霊園に墓参していたが、Uターンしてからは上京に合わせ挨拶に出向いている。祈ると想い出が走馬灯のように脳裏を巡る。