靖國神社で秋季例大祭/東京千代田区

平和を祈り、英霊に感謝

参向する勅使羽倉信夫掌典=10月18日、東京都千代田区の靖国神社

 東京都千代田区の靖國神社(大塚海夫宮司)で令和6年秋季例大祭が10月17日の清祓で始まり19日までの3日間斎行された。秋季例大祭に合わせ、石破茂首相は17日「内閣総理大臣 石破茂」名で真榊を奉納し、尾辻秀久参議院議長、福岡資麿厚生労働大臣も真榊を納めた。高市早苗前経済安全保障担当大臣は17日に靖国神社を参拝。超党派の議員連盟「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」は衆議院選挙期間中であることを考慮して一斉参拝を延期し、代表して自民党の佐藤正久参議院議員が参拝した。皇室からは17日午後に彬子女王殿下が、19日の午後に瑶子女王殿下が参拝された。

 曇り空の10月18日午前10時、大太鼓が境内に鳴り響き、宮司・神職が参進。国歌斉唱に続き本殿内陣の御扉が開かれて、神饌、初獻の神酒が供えられた。宮司が神前に進み祝詞を奏上、英霊に感謝の誠を捧げた。二獻の神酒を供えた後、勅使(羽倉信夫掌典)が御幣物を奉じて参向、本殿所定の座に着く。宮司は御幣物を神前に奉奠した。勅使は神前に進み御祭文を奏上。宮司が御祭文を内陣に納め、勅使は玉串を奉って拝礼した。
 勅使・随員下向後、「鎭魂頌」「靖國神社の歌」が奉奏され、三獻の神酒を供えた後、宮司が玉串を奉って拝礼した。宮司に続き特別参列者と崇敬者総代が本殿に進み玉串を奉って拝礼。午後3時、御幣物、神饌が徹せられた後、宮司が御扉を閉じ秋季例大祭当日祭は滞りなく修められた。
 秋季例大祭の期間中、境内では各流派家元による献華展や奉納菊花展、能楽堂では各種奉納芸能が行われ、剣詩舞、日本舞踊、古武道、琵琶楽、琉球舞踊など様々な芸能が、多くの参拝者が見守る中、奉納された。
 靖国神社の遊就館では、特別展「兵食」―陸海軍の食事から英霊に捧げる「神饌」まで―が11月16日まで開かれている。
 第1章「『兵食』とは」では、陸海軍の「兵食」の歴史を紐解き、陸軍、海軍の代表的なメニューを再現、将兵の健康管理や栄養管理の研究により、保存がきく栄養価の高い食品が開発された歴史が紹介されている。第2章「実際の『食』」では、昭和の時代に栄養料理が取り入れられ、メニューが豊富になった「兵食」が紹介されている。「兵食」のいくつかは戦後、レストランの定番メニューになった。
 第3章「英霊と『食』」では、戦地で散華した英霊たちが思いを馳せた「食」が紹介されている。郷土料理や出征前の食事、母が作った懐かしい味など、また遺品の手紙や手記により英霊が愛した「食」の実際がエピソードを添えて紹介されている。昭和13年5月20日に中華民国江蘇省連雲港で戦死した宮久地寅吉命(海軍二等兵曹)は生前の手紙で「枇杷はいくら食いたくても食われません来年お送り下さい」と記した。その手紙と遺影、そして千葉県安房郡富浦町(現・南房総市)の枇杷を紹介している。
 第4章「英霊に捧げる『食』」では、靖国神社が祭典で供える「神饌」や全国から年中奉納される「食」が紹介されている。同社ではウイスキー、ビール、サイダー、タバコなど他の神社では見られないものを含め、英霊の奉慰のため50台の神饌が春・秋の例大祭で供えられている。