戦後79年、武道館で全国戦没者追悼式

天皇皇后両陛下が平和の祈り
全戦没者に追悼の誠を捧げる

おことばを述べられる天皇陛下=8月15日、東京都千代田区の日本武道館


 戦後79年の令和6年8月15日、東京都千代田区の日本武道館で全国戦没者追悼式が開催された。当日は、天皇皇后両陛下が御臨席され、岸田文雄内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所長官(代理)、各国務大臣、各都道府県代表、関係団体の代表ら合わせて約4300人が参列し、約310万人を数える全戦没者に追悼の誠を捧げた。
 午前11時51分、開会が宣言され、全員が起立して両陛下を迎える。国歌斉唱に続き、岸田文雄内閣総理大臣が式辞を述べた。
 「祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦場に斃れた方々。戦後、遠い異郷の地で亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、各都市での爆撃、沖縄での地上戦などにより犠牲となられた方々。今、すべての御霊の御前にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げる。今日の我が国の平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い命と、苦難の歴史の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れない。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧げる。
 戦後、我が国は一貫して、平和国家として、その歩みを進め、歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきた。戦争の惨禍を二度と繰り返さない。この決然たる誓いを、世代を超えて継承し、貫いていく。未だ悲惨な争いが絶えることのない世界にあって、我が国は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化を進め、『人間の尊厳』を中心に据えながら、世界が直面する様々な課題の解決に、全力で取り組み、国の未来を切り拓いていく」
 両陛下は標柱の前に進み深く一礼された。正午の時報に合わせ一分間の黙祷を捧げられ、両陛下に合わせ、参列者が同様に黙祷を捧げた。
 天皇陛下がおことばを述べられた。
 「本日、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来79年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
 これからも、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います。
 ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」
 額賀福志郎衆議院議長、尾辻秀久参議院議長、最高裁判所長官(代理)の追悼の辞の後、昭和18年11月に中支方面で戦病死した安齋與一氏の子、安齋満氏が遺族代表として追悼の辞を述べた。
 「戦場で無念にも散華された戦没者のことを忘れたことはない。私が5歳、弟が1歳、母が25歳の時に父は出征し、その年の11月に中国で戦病死した。その後の母の苦労は並大抵のものではなく、農作業で働く一方、遺族会活動を通じ、家族を守り抜き、94歳の天寿を全うした。今日の平和と繁栄は、戦没者の皆様の貴い犠牲の上に築かれたものであり、国の礎となられた。その貴い行いを多くの国民に知っていただき、感謝の気持ちを寄せていただきたい」
 次いで、岸田総理大臣はじめ衆参両院議長らが献花し、式典は滞りなく終了した。