日本の看取りを考える全国フォーラム

コロナ禍で増える自宅での看取り

講演する柴田久美子会長

 日本看取り学会が主催する第8回日本の看取りを考える全国フォーラムin OKAYAMA(共催:㈱日本看取り士会・一般社団法人日本看取り士会)が9月12日、当初、岡山で開催の予定だったが、感染防止のためオンラインで開かれた。
 開会式では、日本看取り学会の渡部俊弘会長(北海道文教大学学長)の挨拶に続き、全国12校の看護学生1200人から寄せられた映画「みとりし」の感想文コンクール授賞式が行われた。
 第1部基調講演で日本看取り士会の柴田久美子会長は「コロナ禍における看取りの変容」と題し、次のように語った。
 医療切迫の中で最期を迎える人たちは、限られた時間を在宅で過ごそうと思い、看取り士会への依頼も増えている。訪問看護師と連携するステーションも24に増やし、1500人を超える看取り士とエンゼルチームの人たちが、今日も現場に出ている。コロナ禍の今は救急車が呼びにくいので、自宅での看取りを可能にしたい。
 看取り士の仕事は、相談に次いで臨終の立会い。呼吸が乱れ、不安になると連絡するよう家族に伝え、臨終に立ち会う。寄り添い、利用者の呼吸を引き取ると、次第に穏やかになる。そして、看取りの作法を家族に伝授する。グリーフケア、旅立ちに伴う心理的負担の軽減で、悔いを残さないようにする。
 私は30年前、マザー・テレサの「人生の99%が不幸であっても、最後の1%が幸せならば、その人の人生は幸せなものに変わる」という言葉に出会い、看取り活動を始めた。そして、体験から次のような死生観を得た。
 人は体と良い心、魂の三つをもらって生まれる。体が死ぬとき、人生で蓄えてきた魂のエネルギーは子や孫に引き継がれ、進化の力となる。しかし、85%を占める病院死では、ドライアイスで遺体が冷たくなり、抱きしめることができないので、それが難しい。
 よき死についてターミナルケアの柏木哲夫医師は、苦しくなく、交わりがあり、平安な死だと述べている。これに沿い、最近、看取った認知症のある74歳の女性のケースを紹介したい。依頼者は離れた所に住む姪で、死の3か月前から看取り士が寄り添い始めた。
 彼女は元気なころ、回復したら皆さんのお役に立ちたいと言っていた。日を追ってがんが広がり、寝たきりになったので、訪問医師と看護師、部屋まで届けてくれる宅配弁当の業者を探した。
 看取り士が帰ろうとすると、寂しいから帰らないでと言っていたが、旅立ちの前日、「お父さんが迎えに来てくれた。たくさんの人たちと一緒で幸せよ。ありがとう」と告げた。「お迎え現象」は現場で何度も体験している。
 当日、介護士からの連絡で訪問し、臨終の看取りをした。そして、駆け付けた家族に看取りの作法を伝え、子供や姪の人たちが順番にご遺体を抱き、お別れをし、団地で通夜を済ませ、葬儀に参加し、火葬場にお送りした。
 クリスチャンの柏木先生の言う平安な死を迎えるにはしっかりした死生観が必要で、看取り士もその会話をやさしくするようにしている。死は暮らしの一部で、コロナ禍でも在宅で幸せな死を迎えることができる。
 次いで第2部事前録画シンポジウム「あなたが考える愛されていると感じる旅立ちとは…」が放映され、『人は生まれ変わる』(ベストブック )の近著がある藤和彦・経産省経済産業研究所上席研究員、船井勝仁・㈱船井本社代表取締役、渡部学長、看取り士の西河美智子さんらが「愛されていると感じる旅立ち」について語り合った。