渋沢栄一記念館

2021年3月10日付 773号

 埼玉県深谷市にある渋沢栄一記念館を訪ねたのは昨年9月下旬。年配スタッフに「なぜ『青天を衝け』になったのか、知っていますか?」と聞かれ、「そうだ、知らなかった!」。「NHKの制作クルーが当館に来て、栄一の漢詩を見て思い付いたのです」と教えてくれた。
 日頃は仲間と米と小麦づくりにいそしんでいる天地子が、深谷と聞いて連想したのはネギ。長い白根がきれいで甘い深谷ネギは鍋やすき焼きに欠かせない。記念館のエントランスにも、郷土産品としてしっかりネギが展示されていた。
 驚いたのは、講義室で栄一のアンドロイドが講義してくれたこと。大阪大学の石黒浩教授が製作したという。内容は持論の「論語と算盤」。グローバル経済に加え、コロナ時代の新しい倫理が求められている今、心すべきことだと拝聴する。司会のスタッフとのやり取りもあり、「好みは?」と聞かれ、栄一が「もちろん煮ぼうとう」と答えたので、会場は爆笑。
 記念館の裏側に、大きな栄一の銅像があった。もとはJR深谷駅前にあったが、大きすぎで見づらいので、公民館に記念館を併設したときに移転し、生誕地が見える裏側に据えたという。
 記念館から徒歩10分で、栄一の生家「中の家」へ。蚕室のある造りで、藍玉小屋もあった。ここでも元気なおじさんたちに迎えられ、さぬきから来たというと、「そりゃ、さぬきうどんのほうがおいしいだろう」と。お昼はお勧めの店へ。煮ぼうとうはみそ味で、山梨のほうとうに似ていた。