里山クラブ
2020年3月10日付 761号
天地子は昨年4月、自治会の仲間と里山クラブを立ち上げ、地域の川の堤や道路わきの草刈り、用水路の掃除、小学校の花壇の整備など行っている。農水省の補助金を受けての活動で、来年度は農道の舗装や休耕田のビオトープ化も計画している。
25年前、母の介護でUターンし、一番驚いたのは山麓の畑が孟宗竹の林に変わっていたこと。かつて稲束干しや農具作り、タケノコ栽培に使われていた竹林が、人手が入らなくなり、周りの放棄された畑に拡大していったのである。
昭和30年代から化石燃料が家庭に入って山から薪を集めなくなり、化学肥料の普及で柴や下草を刈り、田んぼに入れることもしなくなった。経済合理性にはかなっていたが、人が入らなくなった山は荒れ、キノコも生えなくなり、有機質の欠乏で田んぼは地力を失っていった。今、日本農業はその反省期にある。
失われたのは里山の風景と自然と共にあった人々の暮らし。多くの人が地方から都会に移ったことで経済は成長したが、彼らを育てた風土は消えつつある。創造性のもとになる感性が自然との交流で育まれるとすれば、日本の将来に不安を感じる。
人生100年時代に問われているのは生き方だろう。最も自由に生きられる高齢期を里地里山の再生に投じる人がいてもいい。子供たちの笑顔、お年寄りの昔話、自然の恵みを受けて育つ様々ないのち、それらとの触れ合いを喜ぶ暮らしがあってもいいのではないか。