土師神社

2019年9月10日付 755号

 福知山の友人宅に泊まった時、市内に土師神社があると聞き、訪ねてみた。土師氏は古代豪族の一つで、技術に長じ、古墳時代に出雲、吉備、河内、大和で古墳の造営や葬送儀礼にかかわっていた。
 大阪府藤井寺市の道明寺天満宮の前身は土師神社で、土師氏氏寺の道明寺一帯は「土師の里」と呼ばれていた。その歴史から、道明寺天満宮では子供たちの埴輪づくりを行っている。
 土師氏の祖・野見宿禰は天穂日命14世の孫で、菅原道真の遠祖にあたり、相撲の元祖としても知られる。『日本書紀』には次のような話がある。当麻蹴速が天下一の力持ちだとの噂を聞いた垂仁天皇が、出雲から野見宿禰を呼びよせて戦わせたところ見事に勝ったので、当麻蹴速の土地を与えられた。
 また、皇后・日葉酢姫命が薨じた時、殉死者が多いのを天皇が哀しんでいると、野見宿禰が埴土で像を造り、殉死に代えることを進言し、出雲から人を呼んで土の人形や馬を作らせ、これを埴輪と呼んだという。
 土師氏が源流で、平安時代初期の貴族・大江音人(おとんど)を始祖とする友人は、所有の山に野見宿禰と大江音人の顕彰碑を建立していた。大江山を望む中山間地で、杉の山に朝霧がたなびく美しい里だが、イノシシにシカ、クマの被害に2メートルものフェンスを張って防衛していた。
 天地子の里はイノシシだけの1メートル余のフェンス。田舎に暮らす楽しみと苦労を夜更けまで語り合った。