東日本大震災追悼・復興祈願祭/鎌倉大仏殿高徳院

被災地へ、神道、キリスト教、仏教の祈り

東日本大震災追悼・復興祈願祭「仏教の祈り」
東日本大震災追悼・復興祈願祭「仏教の祈り」

 鎌倉宗教者会議主催(会長:吉田茂穂・鶴岡八幡宮宮司)の東日本大震災追悼・復興祈願祭が三月十一日、鎌倉大仏殿高徳院で営まれた。この追悼・復興祈願祭は東日本大震災の一か月後に鶴岡八幡宮で第一回が行われて以来、八回目になる。鎌倉の神職、僧侶、司祭、牧師が心を一つにして参列者と共に震災の犠牲者を哀悼し、被災者に思いを寄せて祈りを捧げ、一般参列者も式典終了後、参拝・焼香をした。
 午後二時四十分、奉仕する宗教者により「行道(ぎょうどう)」が行われ、雅楽を先頭に神道約二十名、キリスト教約三十五名、仏教約六十名が散華と共に列をなして山門から大仏前まで進んだ。続いて地震発生時刻の午後二時四十六分に大仏像を囲む形で、聖職者、参詣者全員が起立し一分間の黙祷。境内から一切の音が消え静寂に。同時に寺院、教会の鐘が一斉に撞き鳴らされた。悲しみの鐘が市内全域に響き渡った。
 最初に鶴岡八幡宮を中心とした鎌倉の神社の神職、約二十名による「神道の祈り」が捧げられた。修祓の儀の後に神職と参列者全員が共に大祓詞を斉唱した後、玉串を奉って拝礼した。
 次に鎌倉市内キリスト教諸教会(カトリック教会、日本基督教団、日本聖公会、日本キリスト教会)の司祭、牧師、合わせて約三十五名と信徒による「キリスト教の祈り」が捧げられた。初めにカトリック雪の下教会・内藤聡神父が冠水、献香、導入の祈りを捧げ、カトリック由比ヶ浜教会のマリオ・ビアンキン神父が聖書のローマ人への手紙十二章九―二十一節を朗読した。
 日本聖公会・鎌倉聖ミカエル教会の小林裕二牧師は「この季節を迎えるたびにあの地震と津波の恐怖、暗く寒かった夜を思い出さずにはいられない。目に見える復興は着実に進み、人々の忍耐と力強さを感じるが、一方誰にも看取られず孤独のうちにこの世を去った方々もいる。あなたのいつくしみ深いみ腕のうちにお迎えし、すべての犠牲者と共に魂の平安のうちに憩う事ができますように。私たちにこの世界の悲しみや苦しみから目を背けない勇気をあたえてください」と祈った。
 ペルー人信徒の米山リディアさんの讃美歌「アメージンググレイス」独唱が続き、カトリック雪の下教会・古川勉神父の「主の祈り」、信徒たちも含めた全員での讃美歌「いつくしみふかき」、日本基督教団大船教会の松下道成牧師の「結びの祈り」が捧げられた。
 最後に「仏教の祈り」が導師・浄土宗大本山光明寺法主・柴田哲彦台下と鎌倉市内外の約六十五名の僧侶により執り行われた。導師が法要に込められた思いを読み上げる「表白」を奉読した後、僧侶と参列者全員が観音経世尊偈を読経した。次に「南無阿弥陀仏」と念仏が唱えられ、代表焼香が行われた。
 松尾崇鎌倉市長が市民代表として焼香、続いて三宗教の代表、鎌倉宗教者会議会長・吉田茂穂鶴岡八幡宮宮司、同副会長・横田南嶺臨済宗円覚寺派管長、同副会長・小林裕二日本聖公会鎌倉聖ミカエル教会司祭、佐藤孝雄高徳院住職が焼香した。導師と共に参列者全員が「願わくは此の功徳を以て、平等一切に施し、同じく菩提心を発こして、安楽国に往生せん」と「ご回向」を唱和して仏教の真摯な祈りを被災地に送り「仏教の祈り」を執り修めた。
 鎌倉大仏殿高徳院の佐藤孝雄住職は「神道、仏教、キリスト教徒の三宗教合同で祈りを捧げる場を設けられ、ありがたい。今日も晴天に恵まれ、法要を奉修することができた。鎌倉のNPO団体が被災地の支援をしていて、高徳院も三月十一日の拝観料収入は被災地のために使っている。毎年被災地の家族を鎌倉に招待しており、法要を通して鎌倉の心は常に被災地にあるというメッセージが伝わればいい」と語った。
(2018年3月20日付733号)