東日本大震災復興祈願万灯会

僧侶と参拝者が復興祈る/鎌倉・浄光明寺

浄光明寺客殿での合同読経
浄光明寺客殿での合同読経

 三月十日、神奈川県鎌倉市の扇ガ谷・浄光明寺(大三輪龍哉住職)で鎌倉十三仏詣実行委員会主催の東日本大震災復興祈願万灯会が開催された。鎌倉の寺社(真言宗、浄土宗、臨済宗、日蓮宗)の僧侶が宗派をこえて法要を執り行い、一般の参詣者とともに復興を祈願するもので、氏名と願い事を込めて献灯された万灯が境内に並べられ、法要時に灯りがともされる。浄光明寺の大三輪住職によると、「鎌倉の十三仏霊場会では、東日本大震災後、犠牲者の慰霊と被災地の復興を願う万灯会を、震災から百日目に浄光明寺で行い、以後他の寺院で行っている」という経緯。
 午後五時半に各宗派の僧侶が海蔵寺に集まり、般若心経を唱えて法要を行い、浄光明寺まで行道を行った。僧侶に参詣者たちが続き、浄光明寺の山門から境内に入った後、境内に各宗派に分かれて移り(臨済宗:仏殿、日蓮宗:観音堂、浄土宗:客殿、真言宗:不動堂)、読経が行われた。参詣者たちは読経の中、焼香を行い、東日本大震災の犠牲者に祈りを捧げ、復興を祈願した。
 午後七時、客殿で東日本大震災によって大きな被害を受けた宮城県女川町の一般社団法人コミュニティースペースうみねこの八木純子代表理事が紹介され、被災地の現状を説明した。「女川町は震災前の人口一万二千名のうち八百七十二名が犠牲になり、現在は六千二百名で、過疎化が進んでいる。雇用が必要なので、若者、高齢者、子育て中のお母さんなどに働く場を提供している。皆さんと交流することが我々の力になる」
 全宗派の読経が終わった後、僧侶は客殿に集まり、合同読経が行われた。代表焼香の後に、参詣者が焼香。終わると、導師を務めた浄光明寺の大三輪住職が挨拶した。
 「明日で東日本大震災から七年になる。震災直後は皆が何か力になりたいと思っていたが、今は関心が薄れている。復興はまだ半ばで、人々が日々の暮らしを取り戻すにはまだ何年もかかる。今後も被災地の事を思い続ける心を大事にしたい。万灯会は奈良時代からの伝統的な行事で、平安時代に高野山での万灯会に際して、空海は『虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きなむ』という言葉を残している。仮初めの世界に暮らし悩み苦しむ衆生が皆仏の境地に至る日まで私の願いは尽きることはないという意味で、悩み苦しむ人がいる限り私は寄り添い続けるという菩薩としての決意が述べられたものだ。菩薩による衆生の救済は、知恵によって進むべき道筋を開くことと、慈悲の心によって衆生に優しく手をさしのべること。皆さんも菩薩の心を持っている。皆さんが灯した灯明の光は知恵の光となって被災者を照らし、慈悲の温もりとなって被災者の心を癒やすだろう」
 アメリカから来た女性は、「仏教の異なる宗派が一堂に集って祈りをささげるのはいいことで調和の行事だ。厳かな宗教行事に参加できて嬉しい。いい思い出になった」と語っていた。
 コミュニティースペースうみねこは、被災者が前向きに生きていけるよう、残された納屋を改修した加工場兼コミュニティカフェを「ゆめハウス」と名付け、ボランティアの道具置き場などにも活用するなど様々な活動を展開している。
(2018年3月20日付733号)