第10回日本の看取りを考える全国フォーラム

ホスピス財団の柏木哲夫氏が講演/岡山市

講演する柏木哲夫氏

 日本看取り学会(会長・渡部俊弘北海道文教大学学長)が主催する第10回日本の看取りを考える全国フォーラムが、岡山市内の会場とオンラインで開催された。㈱日本看取り士会・一般社団法人日本看取り士会(柴田久美子会長)との共催で、岡山県・岡山市・日本医師会・日本介護支援協会などが後援。淀川キリスト教病院理事長、大阪大学名誉教授、ホスピス財団理事長の柏木哲夫氏が基調講演し、看取り士などによるシンポジウムが行われた。
 ホスピスなどでこれまで2500人を看取った柏木氏は「看取りからグリーフケアへ」と題し、次のように講演した。
 家族ケアの三大要素は、予期悲嘆のケア、死の受容への援助、死別後の悲嘆ケアで、医療者にとって患者と家族の両方が大事。生前に悲しみを表現しておく方が、死別後の悲嘆のプロセスがスムーズになる。医療者は、悲しみを表現できる場所と時間を提供することが大切で、患者の痛みは減らすが、死は近づいていることを情を込めて話す必要がある。患者や家族が医師に聞きにくいときは看護師に聞いてもらい、病状については、できるだけ多くの家族に直接、エビデンスを示しながら説明する。
 死別後の家族が一番つらいのは、「悲しんではダメ」「頑張って」などと言われること。心を込めて悲しみに寄り添うようにしたい。そして、よかったと思えることを探すようにする。してはいけないのは、安易な励まし、無責任な助言、勝手な解釈、不適切な保証で、例えば「時間が解決してくれる」など。

シンポジウムで(左から)塩内美春さん、小川みさ子さん、柴田久美子会長

 効果的なのは遺族同士の自助グループに参加すること。悲しみや苦労を分かち合い、支え合う機会を得ることが回復への近道となる。
 シンポジウム「あなたが考える愛されていると感じる旅立ちとは」では、看護師で看取り士になった岐阜県大垣市在住の小川みさ子さんが、初めての看取りでの体験を報告。80歳で一人暮らしの女性を娘さんの依頼で担当したところ、孫の大学生が「僕がおばあちゃんを看取りたい」と言い出し、看取りの作法を習って、かつて自分が生まれ、祖母に抱かれた部屋で看取ることに。ケーキやおかゆでなく大好きなご飯も食べ、最後には呼吸を合わせる孫に抱かれて旅立ったという。母の看取りを依頼した塩内美春さんは、「母の看取りを通して私たちの人生には意味があることを教えられ、息子も大きな影響を受けていました」と語っていた。
 柴田会長は10年前、柏木先生に会った時、「どんな資格を持ってやっているの」と聞かれ、「看護師でも医師でもなく普通の主婦です」と答えるとびっくりされ、背中に手を添えてくださった思い出を語り、その柏木先生を10年後に講師に迎えたところ、「心を込めて頑張るんだよと背中を押したのですよ、と言われた」というエピソードを紹介。多くの人たちが幸せな最期を迎えられるよう活動を広げていきたい、と結んだ。