悲しみ新たに令和5年全国戦没者追悼式

天皇皇后両陛下が追悼と平和の祈り

おことばを述べられる天皇陛下

 終戦後78年の8月15日、東京都千代田区の日本武道館で政府主催の全国戦没者追悼式が開催された。当日は、天皇皇后両陛下が御臨席され、岸田文雄内閣総理大臣、衆議院議長(代理)、参議院議長、最高裁判所長官、各国務大臣、各都道府県代表、関係団体の代表ら合わせて約2700人が参列し、約310万人を数える全戦没者に追悼の誠を捧げた。
 午前11時51分、開会が宣言され、全員が起立して両陛下を迎える。国歌斉唱に続き、岸田総理が式辞を述べた。
 「祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながら、戦場に斃れた方々。戦後、遠い異郷の地で亡くなられた方々。広島や長崎での原爆投下、各都市での爆撃、沖縄での地上戦などにより犠牲となられた方々。今、すべての御霊の御前にあって、御霊安かれと、心より、お祈り申し上げる。今日の我が国の平和と繁栄は、戦没者の皆様の尊い命と、苦難の歴史の上に築かれたものであることを、私たちは片時たりとも忘れない。改めて、衷心より、敬意と感謝の念を捧げる。戦後、我が国は一貫して、平和国家として、その歩みを進め、歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきた。未だ争いが絶えることのない世界にあって、我が国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携え、世界が直面する様々な課題の解決に、全力で取り組み、今を生きる世代、そして、これからの世代のために、国の未来を切り拓いていく」
 両陛下は標柱の前に進み深く一礼された。正午の時報に合わせ一分間の黙祷を捧げられ、両陛下に合わせ、参列者が同様に黙祷を捧げた。
 天皇陛下がおことばを述べられた。
 「本日、『戦没者を追悼し平和を祈念する日』に当たり、全国戦没者追悼式に臨み、さきの大戦において、かけがえのない命を失った数多くの人々とその遺族を思い、深い悲しみを新たにいたします。
 終戦以来78年、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられましたが、多くの苦難に満ちた国民の歩みを思うとき、誠に感慨深いものがあります。
 これからも、私たち皆で心を合わせ、将来にわたって平和と人々の幸せを希求し続けていくことを心から願います。
 ここに、戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対し、全国民と共に、心から追悼の意を表し、世界の平和と我が国の一層の発展を祈ります」
 細田博之衆議院議長(海江田万里副議長が代読)、尾辻秀久参議院議長、戸倉三郎最高裁判所長官の追悼の辞の後、中国廣西省で戦死した、横田正則陸軍兵長の子・横田輝雄氏が遺族代表として追悼の辞を述べた。
 「父は昭和19年4月最愛の家族の安寧、祖国の安泰と平和を願い出征していった。母は3番目の子供のことを知らせるため何度も手紙を書いたが、父のもとに届くことはなく、父は昭和20年5月に中国で無念の戦死をされた。家族は悲しみが深く、心が折れそうにもなるときもあったが、励まし合って懸命に生きてきた。今日の平穏な生活は戦没者の尊い犠牲の礎の上に築かれたものであることを決して忘れない。依然として戦争は絶えず、尊い命が失われている。ロシアのウクライナへの侵攻は言語道断で、先の戦争を思い出さずにはいられない。我が国が平和の実現にむけて果たすべき役割は小さくない。私達遺族は戦争の悲惨さとの平和の尊さを孫、ひ孫の世代へと語り続けることを誓う」
 献花となり、岸田総理、衆議院副議長、参議院議長、最高裁判所長官、日本遺族会会長、各都道府県遺族代表、一般戦災死没者遺族代表、原爆死没者遺族代表、青少年代表、参議院副議長、各国務大臣、各政党代表、各団体代表者が黄色菊を捧げた。最後に加藤勝信厚生労働大臣が献花して、式典は滞りなく終了した。

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