松尾大社の節分祭に石見神楽

「恵比寿大黒」など奉納/京都市西京区

にこやかな笑顔で舞う恵比寿=2月3日、京都市西京区の松尾大社

 京都市西京区の松尾大社で2月3日の節分の朝、石見神楽が「種神楽保存会(島根県益田市)」によって奉納され、多くの参拝者が動きのある艶やかな衣装の伝統神楽を楽しんだ。
 めでたいことに因む演目「恵比寿大黒」では、恵比寿が鯛を釣り上げるのに加え、参拝者に節分の福豆がまかれた。大国主命である大黒は恵比寿の父親で、二神のにこやかな笑顔と、神徳を体現するようなおおらかな舞に、人々の幸福を願う気持ちが表れていた。
 他の演目「鍾馗(しょうき)」では、もともと中国の神である鍾馗が剣を持ち、コロナに見立てた悪鬼を成敗した。日本で鍾馗は、五月人形や疫神よけの人形に作られたりしている。鍾馗は、目が大きく、頬からあごにかけて濃いひげをはやし、黒い衣冠をつけ長ぐつをはき、右手に抜き身の剣を持つが、この演目では左手に疫神を祓う茅の輪をつかんで舞った。
 「鍾馗」と「恵比須」は島根県益田市の無形民俗文化財に指定されており、2019年5月に認定された文化庁の日本遺産「神々や鬼たちが躍動する神話の世界〜石見地域で伝承される神楽」の構成文化財にも選ばれている。
 松尾大社は大宝元年(701)、勅命によって秦忌寸都理(はたのいみきのとり)が創建。主祭神は大山咋神(おおやまくいのかみ)と中津島姫命(なかつしまひめのみこと)の二柱で、中津島姫命は市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)の別名。

右手に剣、左手に茅の輪を持って悪鬼を祓う鍾馗

 同大社の背後には松尾山の巨大な磐座が控え、もとは古代の磐座信仰があったとされている。神代、八百万の神々が松尾山に集まった際に祭神である松尾大神が、嵐山の米を蒸し、松尾山から湧き出る水を使って酒を作り、神様に振る舞ったとの伝えがあり、中世から「お酒の神様」と言われ、醸造の祖神として人々の篤い信仰を集めている。